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『マネするだけでセンスのいいフォント』ができるまで

『3色だけでセンスのいい色』『あるあるデザイン』『けっきょく、よはく』など、デザイン書で数々のヒット作を生み出すingectar-eさん。今回は10月19日発売の『マネするだけでセンスのいいフォント』の発売を記念して、本書の制作の裏側をテーマにingectar-e代表の寺本恵里さんにnoteを執筆いただきました。担当編集も知らない著者目線の制作の裏側をここだけで公開します。

こんにちは、ingectar-eの寺本恵里です。

10月19日に発売されるingectar-eの最新刊『マネするだけでセンスのいいフォント』が出来るまでを、はりきって著者目線で書かせて頂きます。

初めましての皆さまへ。

私の自己紹介をしておきます!

ingectar-e design site 代表 寺本恵里
・「ingectar-e」著者でイラスト素材集・デザイン書の制作を30冊以上制作。
・「けっきく、よはく」シリーズ累計20万部
・「あるあるデザイン」シリーズ累計10万部
・「3色だけでセンスのいい色」発売1年で累計12万部
・飲食でバイトすらしたことない未経験で、ビルの3階にカフェを開業
・現在は大阪・京都に「ROCCA&FRIENDS」「FOREST GREEN」8店舗、FC2店舗

現在も本の執筆を常に3冊以上並行させながら、飲食の業態開発や出店も進めています!


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マネするだけでセンスのいいフォント、発想の素

3色本02

おかげさまで発売1年で累計12万部を突破した『3色だけでセンスのいい色』(以下、3色本)の次回作!ということで、それを「フォントにしよう!」という発想は、3色本の担当編集、インプレスの宇枝さんからでした。

2020年8月04日、宇枝さんからメッセンジャーにて、

画像10

この宇枝さんとのやりとりの瞬間、

「もう完全にできてる・・・」と思いました。

フォントの組み合わせをイメージ別に紹介している本、作例も豊富に載せて、そのままマネするだけでOK、めちゃくちゃいい!!私が思いつきたかった!!と思いつつ、制作開始までとてもワクワクできる企画でした。

そして、日々デザインを制作している中でフォントを組み合わせるなんてもう日常茶飯事すぎるし、私たちingectar-eのデザイナーにとっては色と同じく大好きなフォント、余裕で制作できる!

と思っていて、常にアイデアに溢れる宇枝さんからは、他にも様々な企画案を頂いてましたが、その中でもフォントをまず優先して制作したい!となりました。

3色本の次回作を、また「色」にするのではなくて、「フォント」にするのが良いなぁと。

はー、私が思いつきたかった・・・!と悔しい思いでした(笑)


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「メイン」「アクセント」「ベース」、3種類のフォントを組み合わせる

紙面構成としては、見開き1ページで、ページをめくるたびに作例とフォントの組み合わせが沢山見れるようにしました。3色本の紙面を踏襲してます。下の画像が実際の紙面です。

写真03

左ページにメインのビジュアルと、使っている3種類のフォントをカタログ的にのせています。そして右ページに、3種類の場合、2種類、1種類だけの作例も紹介しています。


写真03

上の画像のように、左ページ下には使っているフォントの組み合わせを紹介しています。最初は3種類のフォントを当然「見出し」「小見出し」「本文」と紹介していたのですが、編集さんのご意見で、ノンデザイナーの方にも分かりやすい表現かつ活用方法を限定的にしないために、「メイン」「アクセント」「ベース」と紹介していきましょうとなりました。

この辺からデザイナーとして今までフォントと無意識に向き合ってきた凝り固まった常識を払拭しないと、なかなか難しいなと。確かに小見出しってアクセント的要素もあるなぁと、新鮮な気持ちになりました。


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最大の難関、フォントの言語化ってむずかしい!

制作で最も難しかったのは、デザインのイメージに合わせてフォントを言語化することでした。ここはもうかなり編集さんの力をお借りしました。

写真04

組み合わせを紹介している以上、「なぜこのフォントの組み合わせがいいのか」の部分の説明は必須。紙面でも上の画像のようにテーマや解説を掲載しています。いつも無意識にやっている組み合わせや、自分の中で「これがいいから」と当たり前のように選んでいるフォントの言語化に非常に苦労しました。

また紙面に掲載するデザイン作例の制作も苦戦しました。

今回は一部、新人の育成もかねていたので、まずはお題に対して自分で考えて制作してもらって、それをひたすら直して、直した部分を指摘して教えたりもしました。

写真05 (1)

ナチュラルというカテゴリーに合う写真の選び方、文字のサイズ、あしらいで訴求の仕方も、これはこれで、こういうNGとOKの本が出来そうだと思うほど、初回案から完成にいくまでかなりラリーを重ねています。改善点を指摘する時も、隣に並べて見せるのが一番分かりやすいし本人にも気づきが多いと思い、このように全体の作例のディレクションをしていきました。


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「3」の呪縛に囚われる

タイトル案を編集さん達と考えていくにあたって、出版社の会議室で編集長の和田さんと担当編集の宇枝さんで案出し。前作『3色だけでセンスのいい色』のタイトルを踏襲した方が絶対いい!と思い込んでいたので、

3種だけでセンスのいいフォント
3種だけでオシャレなフォント

しか出て来ず・・・
うんうん悩みつつ、言葉を出しつつ、

和田編集長から、

「色は「3色だけで」と言われると、3色だけでいいんだ!と思える部分があるけど、フォントは3種だけでと言われても感動や発見はない!」

「なんかもっと、何かを解決している、魂の叫びがいい!」

「3種類選んでるのではなくて、3種類のフォントを組み合わせてることに価値がある!それを言いたい!」

「もう組み合わせてあるから、そのままマネするだけでいい!」

そんなブレストを重ねながら、『マネするだけでセンスのいいフォント』が出てきて、確定しました。

著者側としては、レビューに「マネしたいフォントは特にない」とか書かれたらどうしようと思う、ドキドキのタイトルではあるのですが、本当にそのままマネするだけでいい組み合わせが掲載されているので「分かりやすさ重視」でこれでいきましょう!となりました。


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クッキー VS ○○○○○○

タイトルが決まればカバーデザインの制作が始まります。カバーデザインは、3色本のマカロンを踏襲して、スイーツの画像がいいな、というのは初めからなんとなく思い描いていました。

写真6 (1)

(前作『3色だけでセンスのいい色』のカバー)

メインビジュアルは、この時流行ってたクリームソーダとか、アイスクリームも可愛いのでは!と思い、フォントの3つの役割「メイン」「アクセント」「ベース」をクリームソーダ やアイスに見立ててみたりもしました。


画像7

こちらが実際に提案したカバーデザイン案の一部です。他にも、チョコレートとかアルファベットの書かれた積み木とか、編集さんにもアイデアをいただきながら色々な案を作りました。

でもカバーにおいては、

・パッと見て「フォントの本なのだ」と分かること、
・『3色だけでセンスのいい色』とシリーズだと分かること

が一番大事なんですよね。
色々並べてみて、最終的にはアルファベットのクッキーが「フォントの本」だということを一番シンプルに表現していることが分かり、この案に落ち着きました(こうして今並べてみても右下の決定案がしっくりくるし目立ちますね。どうでしょうか?)。

そのあとも、クッキーの種類はこれで良いのか、とか
どのアルファベットを選ぶのか、並べ方は・・・とか、パズルのように試行錯誤が続きましたが、飲食業も営む私たちですので、お菓子やスイーツ案には妥協できませんでした。
色もピンクやブルーなど、検討をした結果黄色になったわけなんですが、

これだけ是非お見せしたい!
私一押しのサーモンピンクバージョン!!

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残念ながら今回はお蔵入りとなりましたが、いずれどこかで使いたい配色です・・!

最終的には、編集さんと印刷会社さんがクッキーの焼き加減にまでこだわってくださり、美味しそうな焼き色のクッキーが出来ました!
(最初の色校ではマットPP加工によって、しっとりクッキーみたくなってました笑)

3種フォント本_07

(完成した『マネするだけでセンスのいいフォント』のカバー)


そんなわけで、『マネするだけでセンスのいいフォント』ができるまで、お楽しみいただけましたでしょうか。

今までにない「フォントの組み合わせが見れる本」なので、ぜひ書店でお手にとってみてくださいね。ingectar-eでは引き続き、皆様のお役に立てる、デザイン書を制作してまいります。

ingectar-eの寺本恵里でした!

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ingectar-e (デザイン事務所)
代表 寺本恵里

デザイン書の執筆やイラスト素材集の制作をしている。著書は30 冊以上。代表作に『3色だけでセンスのいい色』『あるあるデザイン』『けっきょく、よはく。余白を活かしたデザインレイアウトの本』ほか。カフェの運営、企画、プロデュース、開発等も行っている。大阪、京都にて「ROCCA&FRIENDS」など。

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