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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.2

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

『老舗書店「有隣堂」が作る企業YouTubeの世界 ~「チャンネル登録」すら知らなかった社員が登録者数20万人に育てるまで~』

書店の有隣堂さんが運営しているYou Tubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』の裏側が語られている本作。『有隣堂しか知らない世界』はチャンネル登録者数も20万人を突破して、企業公式チャンネルとしては相当大きなものになっています。私も好きでよく見るチャンネルなので、その裏側がどうなっているのか語られる本書は、とても興味深かったです。
チャンネル開設初期の挫折経験や試行錯誤が赤裸々に語られていて、運営の大変さが物凄く伝わってきました……。ただ、それ以上に『新しいことに挑戦する』という有隣堂さんの熱い気持ちも伝わってきて、同じ出版業界に身を置く人間としては身が引き締まりますね! ファンブックというだけじゃなく、魅力的なコンテンツを作るための気づきが得られる良書でした。(OT)

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

アジアやアフリカなどの「辺境地帯」を旅するノンフィクション作家、高野秀行さんと、日本中世史を専門とする歴史学者、清水克行さんの対談本。「世界の辺境と中世の日本には共通する部分がある」ということをフックに、日本と辺境の文化や歴史の話があらゆる角度から進み、推測も交えながら展開される会話がとにかく面白い一冊。
「平安貴族のようにソマリ語の伝統文化に恋愛作法としての詩があって、今でも歌を送る」
「ピストルと武士の刀はどちらも所持していることに象徴的な意味が付随する」
「ミャンマーのある少数民族は雑炊しか食べないが、それは煮炊きも燃料も1回で済むからで、飢饉が多かった室町時代の人々も雑炊を食べていた理由はそれなんじゃないか」など。
共通することもあれば、そうでない部分もあるのですが、それらもひっくるめて「え、そうなの?!」と軽く衝撃を受ける話が満載です。
2015年刊行と最近発売された書籍ではないですが、やや(?)マニアックな歴史や文化が知りたい人は必見。ちなみに、昔は新米よりも古米の方が炊くと分量が増えるので高かったらしいです。(YT)

『本を売る日々』

江戸時代、村々を回って客が求める本を売る本屋である「私」の、客である名主や商家、医師との交流ややりとりを描いた時代小説。画譜を盗む少女や名主の娘にまつわる八百比丘尼伝説、にわかに名医となった町医者の苦悩を綴った三編による連作短編集で、それぞれのエピソードのおおもとには、つねに「本」が存在する。出版人の端くれとして「本」に関する書籍を手に取る機会は多いが、時代小説ははじめてかも。
小口折り(フランス製本)で造られた本書には、「美濃判の書型に、表紙ははなだ色のぬのおうもんか。で、かどぎれと綴糸は紫、変わらないねえ」といった著者の製本愛を感じさせる言葉や、「およそ万事のすることのなかで、読書の益に勝るものはない」や「本は出会いだ。蔵書は出会いの喜びの記憶でもある」といった台詞も随所に散りばめられていて、本好きの読み手をうれしくさせてくれる。また、書林やしょ、書房、書店といった言葉がもつニュアンスの違いもはじめて知った。
スリリングな出来事こそ起こらないが、会話の台詞まわしや心情がていねいに描かれていて、読書の時間がゆっくりと過ぎていく。こうしてストーリーにゆったり身を委ねられる本読みも、じつに心地いい。(ふじい)


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