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【ゆるりと巡る大人の社会科見学 #6】1枚から出荷可能なファインペーパーのハイテク物流拠点をじっくり見学!

出版業界ではお世話になっている人も多い紙の専門商社の株式会社竹尾。ファインペーパー(主に印刷用の特殊紙)を供給する竹尾さんは、神保町や青山、大阪の淀屋橋、福岡にも見本帖の店舗があるので、訪れたことがある人もいるかと思います。今回の大人の社会科見学は、竹尾さんのグループ企業で、倉庫業務を担っている竹尾物流株式会社さんに伺いました。特殊紙、ファインペーパーを扱うハイテクな倉庫の一部を写真とともにご紹介します。

東京の湾岸、東京ゲートブリッジ、若洲海浜公園のそばにある、竹尾物流。色の縦縞が印象的
竹に包まれたおしゃれな入口で、ドラマやMusic Videoの撮影地にもなっている

建物が見本帳の形!

最寄り駅の新木場駅から湾岸地域には、さまざまな倉庫が立ち並んでいますが、遠くの距離からでも目立つ建物だと思って近づくと、壁面には水色の縦縞があります。少し変わった形状だなと思っていましたが、竹尾ミニサンプル(見本帳)がモチーフとして作られたとお聞きし「おお!」となりました。

竹尾のミニサンプル(見本帳)

出版社やデザイン会社では常備していることも多い竹尾のミニサンプルは、下記で見ることができます。

紙の倉庫は、出版業界にいても普段見学できるわけではないので、貴重な経験です。私は、竹尾さんの紙が好きなので、期待値も高まります。
竹尾物流の湾岸デポは、簡単に説明すると、巨大なロッカーみたいな場所に置いてある紙を、自動で取り出してきて出庫する倉庫です。伝わりづらいかと思うので、いただいた資料で、倉庫の全容をご覧ください。

竹尾湾岸デポの全容

コンピュータ管理されている倉庫なので、スタッフの人数はそれほど多くありません。毎日1,000件くらいの用紙の出荷注文があり、この湾岸デポでは、伝票を打ってから、最短で2分30秒で出庫準備ができるそうです。紙の在庫や配送情報などは、すべて竹尾本社のホストコンピュータとオンラインでつながっていて、どの紙がどのくらいあるか、出庫された紙は今現在どこに運ばれているのかなど、集中管理されています。

オートメーション化されたハイテクな倉庫

倉庫1階の入出庫口に移動し、最初に目にするのは中央のピッキングステーション。ここでは常時7〜8名で作業を行われており、想像より少ない人数で作業されていました。ラックから紙を運んでき自動台車が移動する際に発する「ヒューン、ヒューン」という音が聞こえてきます。
長い作業エリアは、区画が1から13まであり、日によってこの区画が変わります。「今日は1から3がお渡しエリアで、4から12まではお届けエリア」などと、当日の入出庫の状況によって区画が変わるそうです。13は入庫の専用レーンになっています。

ピッキングステーションで作業するスタッフ。端末などが並ぶ

ピッキングステーションに商品を送り出すメインの倉庫は、高層自動ラックになっています。竹尾さんの用紙は、全部で約9,000アイテムあり、ほぼすべての紙がこの湾岸デポに常備されています。多品種小ロットの商品を、高速にピックアップ、出庫されていきます。

自動クレーンでピックアップした紙が、STV(Sorting Transfer Vehicle)という荷台に乗り、作業エリアにやってきます。巨大な回転寿司の様相

倉庫には、生きているようなクレーンが高速に移動し、紙をピックアップしています。倉庫にある高層自動ラックは、横に30列。1列に高さ20mの棚が30個並んでいます。棚の総数は19,810。ここに竹尾さんの紙、約9,000アイテムが格納されており、一般的な紙の倉庫とは違い、多品種小ロット、特殊紙ならではの倉庫になっているそうです。
倉庫の棚は、2011年3月11日東日本大震災時も、棚から商品が落ちながったくらい堅牢なもの。よく動く商品は若い数字、奥にいくほど、あまり動かない商品と自動的に配置されており、効率性が考えられています。

下から1t棚、500kg棚、250kg棚、100kg棚、続けて250kg棚、500kg棚、1t棚と、上下に一番重量のある商品棚で構成され、崩れにくいよう設計されているそうです。近未来感があります!
4種類の棚の収納枚数と重さがわかる表。今回の見学を説明していただいた湾岸デポ所長の佐藤欣也さん

紙の出庫指示は、現場の端末に反映されます。出庫する紙は1枚から管理できるようになっています。
例えば、「タントキラKの9番、四六判Y目100キロを5枚」と本社で入力された指示が倉庫に送られると、9,000種類の高層自動ラックの中にある「タントキラKの9番の四六判Y目100キロ」が置いている場所までリフトが移動して、紙の束をピックアップ。ピックアップしたクレーンが荷台まで移動し、担当者がいるピッキングステーションまで運ばれる仕組み。巨大な回転寿司がイメージしやすいです。
出てきた紙の束の中から、現場の担当者が「5枚」を手作業で抜き出します。最後は、機械ではなく、丁寧に手作業なのが印象的でした。
担当者が出庫したあと、端末の完了ボタンを押すと、紙の束はまた倉庫に戻っていきます。担当者が入力する端末は全体のシステムにつながっているので、在庫数がリアルタイムに更新されます。物流の現状をあまり知らなかったので、素直にハイテクだ!と感じました。

積荷するエリアにも紙の倉庫ならではの工夫が!

トラックに商品を積み込むトラックバースのエリアは、風雨が防げる屋根がついています。屋内のようですが、外です。紙は、そもそも濡れると商品にならないので、このような倉庫になっています。

区画の数字と線でデザインされていておしゃれ
入出庫される紙はパレットの上にのって運ばれる

輸出用に出荷されるパレットには、どれも刻印が入っていました。木のパレットは、すべて燻蒸処理、熱処理されたパレットが使われています。燻蒸処理とは、木に虫がつけない、つかないようにする処理のこと。雨も紙の敵ですが、虫も敵ですよね。
2024年2月現在、この倉庫からファインペーパーの輸出は、韓国向けのものが多いそうです。韓国でのファインペーパーの使い方は、商業印刷やカタログほか、名刺などの利用が多いのが特徴とのこと。
その他出荷を待っていたものは、デジタル印刷機用の小巻のロール紙。最近は扱いも増えてきて、書籍のカバーや帯などでもよく使われている「ヴァンヌーボ」も小巻の商品になっており、商業印刷以外でもニーズがあるそうです。
見学させていただいた時間は、ちょうど地方に出荷する時間で、梱包で忙しいタイミングでした。紙なので梱包に気をつかっていることが伺えました。

丁寧に梱包された出荷待ちの商品たち

入庫もオートメーション

ピッキングステーションの一番奥には、入庫専用の13番のエリア。入庫する紙の束は、1t、500kg、250kg、100kgの4種類があります。入ってきた紙の種類や重さ、量などを本社端末で入力すれば、空いている倉庫の棚が検索され、数秒すると荷台がやってきて、自動で選ばれた最適な棚に運ばれていく仕組み。

端末に商品名や数を入力したら、13と書かれた上部のランプが光り、荷台がやってくる

2階には高層自動ラックに入れない輸入紙などが在庫されている

ピッキングステーションの2階に移動。2階の倉庫には、アメリカやイタリア、スウェーデンから来た輸入紙などが在庫されています。天気がよければ、2階の窓から真正面に富士山が見えるそう。伺った日は、雲で見えなくなっていたが、富士山が見られたらよかったです。

有明地区やゲートブリッジが見えます
海外からの紙は、輸出国の刻印がされている。「IT」はイタリア

2階は、主に高層自動ラックには入らないものが在庫されています。この場所の特徴は通路。専用のフォークリフトを動かしてもらいました。普通、棚の通路は3m幅を用意するそうですが、ここでは倉庫の物量を増やすため、通路幅が1.5mになっています。そこで活躍するのが、熟練の操作が必要なフォークリフト。左右両方に荷物が取れる専用のフォークリフトを使って運搬します。ここにもスペースを有効活用できるよう工夫がされています。フォークリフトのドライビングテクニックを見すぎて、写真を取り忘れました涙。

ファインペーパーは多品種小ロットなので、在庫が長いものは数年ある。表面の凸凹や厚薄があるので、高さのある積み重ねができないため、高層自動ラックとは違った、平積みの方法や在庫の方法に、さまざまな工夫がされていました。

2階の倉庫の奥には断裁機がありました。ここは竹尾さんのグループ会社、竹尾紙工株式会社の出張所だそうです。断裁や加工などのメイン業務は高島平にありますが、お客さんのニーズに応じて、ここで断裁加工して販売しています。

プロが操作しているので事故はありませんが、何度見ても大きな歯がドスンと落ちるときにドキドキしてしまいます

これで見学は終了です。見学していて気がついたのは、どこにもゴミらしきものがありません。常に片付けされている印象です。現場というと、どうしてもゴミなどを目にしますが、床もきれいで、竹尾さんの紙やショールームと同様、倉庫も洗練されていると感じました。読者に伝わるかわからないのですが、竹尾さんのイメージ通りです。

普段見られない物流の現場を見学し、ハイテク具合も勉強になりました。お土産に、ファインペーパーで作られたメモブロックまでいただきました。今回は、竹尾物流株式会社さま、見学のご手配いただいた株式会社竹尾の紙子さま、ありがとうございました。

MOTTAINAI MEMOをいただきました!


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