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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.1

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

『ドミノ』『ドミノin上海』

東京駅が 舞台の恩田 陸さんの『ドミノ』とその続編で上海が舞台の『ドミノin上海』。2023年3月31日に東京都の再開発事業に伴い閉店した八重洲ブックセンター本店のフィナーレイベントで、八重洲ブックセンターが描かれた『ドミノ』限定カバーバージョンが出たので手に取り、その流れで『ドミノin上海』も読みました。
30名近い登場人物(動物含む)がそれぞれの思惑を抱えつつなんだかんだと1つの場所に集結していくドタバタパニックコメディ。
見知らぬ人たちがあるタイミングで遭遇したりすれ違ったり、迷ったり勘違いしたり。全員の動きを知っている俯瞰の視点で読み進めるもどんどん加速していくストーリーにドキドキが止まりません。まさに「ドミノ」!
イラストや映像がない分、自分の中で勝手に登場人物の姿が浮かび上がり生き生きと動き出すのは本でしか体験できないことなのかもしれません。私のお気に入りのダリオの正体は実は〇〇で、続編ではなんと〇〇に……。
待ち時間や移動中の楽しみにぜひどうぞ。(わたなべ)

『χの悲劇』

ギリシャ文字 を示すGreekから取ったといわれるGシリーズ10作目、後期三部作の1作目です。主人公は『S&Mシリーズ』でもお馴染みの島田文子です。
最初、Gシリーズなのにいつものメンバーは出てこないの? と思いながら読んでいましたが、香港のトラム(路面電車のようなもの)で起きた密室殺人をきっかけに、リアルとバーチャルの世界を行ったり来たりする描写は、本当に自分がその場にいるかのような没入感を味わうことができます。スピード感がありテンポよく読めますが、「χ」の正体を知ったとき、どうしようもないくらい切なくなり過去作を読み返しました(笑)。Gシリーズ完結に向け、点と点がつながる感覚に面白さと、少しの寂しさを感じます。(みずの)

『読んでいない本について堂々と語る方法』

やや露悪趣味的な自己啓発書風タイトルの本書。本との付き合いかたに関する内面化された規範から人々を解放することを目的としているらしいということが冒頭部でわかって、その時点ではふむふむタイトルどおりだなとなる。
が、その後すぐに「そもそも『読んでいない』とはいかなる状態か」という未読/既読の境界を溶かす問題提起がなされ、やがて、人々が語る本は現実のそれよりも断片的で、再構成されたものであり、(未読者によるものも含めた)「語り」により活力を得て変化していくものだという哲学的な主張に至る。
10年以上本棚の奥に眠っていた本書を昨年末の大掃除の際に(再)発見したのだが、「語り」流通のプラトー状態に至ったこのSNSの時代においてこそ示唆に富む良書だと思った。……と、たいして「読めた」自信はないが、「読めた」風に言っておく。この本の趣旨に従うなら、それでいいはずだ。(AI)


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