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編集者×営業対談|7年連続No.1 『ショートカットキー全事典』がロングヒットし続ける秘訣とは

円滑なPC操作のために「ショートカットキー」は必要不可欠です。そこで役立つのが「ショートカットキー本」。インプレスで刊行された書籍『できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典』は、これまで3回も改訂されるロングセラー本です。8月21日には改訂4版が発売となりました。今回は、編集の佐々木と営業の梅田 に「なぜここまで人気となったのか」「どんな方に愛読されているのか」「編集や営業観点で工夫したこと」などをインタビューしました。

担当者が考える7年連続売上No.1の要因

営業部 梅田 (以下、梅田) 『できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典』は2018年から7年連続で「ショートカットキー事典部門で売上No.1※」となっています。佐々木さんの観点からヒットの要因はどこにあると思いますか?
※2018年1月~2024年6月 大手書店チェーン店調べ

編集部 佐々木 (以下、佐々木) 手前味噌ですが、他のショートカットキー事典と比べてとても見やすく設計されていると思います。B6判と小さいサイズでありながら、文字情報は極力削って、キーボードやキーのビジュアルを全面に出しました。

『できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典』の紙面

他のショートカットキー事典は、かなり淡々とショートカットキーだけを掲載している印象ですので、その点で大きく差別化できているのかなと思います。

梅田 その点はすごくわかりますね。極力、文字数を少なく編集する作業も大変だったことだろうと思います。特に、編集で意識した点はどこですか?

佐々木 「倍速マーク」ですね。ショートカットキーを用いることで、マウス操作と比べて何倍速く作業ができるのかを定義しました。

マウスを使った操作と比較して、ショートカットを使うとどれくらい速くなるかの目安を2~9倍速マークで紹介

「マウスを持つが0.5点」「マウスを動かすが1点」「クリック/右クリックが0.5点」「ダブルクリックが1点」「ドラッグが1.5点」という具合に定義したうえで、ショートカットキーを使うことで2倍から9倍まで効率化できることを記載しています。

全てのショートカットキーに倍速マークを記載している

これにより、読者の方が「覚えるべきショートカットキー」について、優先度を付けられるようにしました。この点は、実際のレビューを見ていても、すごく好評ですね。

梅田 倍速マークは書店さんと話していても、すごく好評なんですよ。展開する際の書店POPにも必ず記載をするようにしています。ストロングポイントですね。

書店POPではイチオシのショートカットキーを紹介

佐々木 それは嬉しいですね。今回の改訂4版では、倍速マークのほかに「必修マーク」を付けました。例えば「コピー&ペースト」や「ファイルの保存」など、業種・職種問わず使われるキーに関しては「必修」としています。

覚えてほしい定番のショートカットキーには「必修」のアイコンを第4版から掲載

梅田 必修マークがあることで、読者の方にとっては、より優先順位を付けやすくなったと思います。

佐々木 はい。使いやすさという観点でもバージョンアップをしました。ただ、売れている背景にはもちろん梅田さんをはじめとして、営業部の皆さんのご尽力があります(笑)。

梅田 いえいえ(笑)。営業目線としては、まずB6判という小さいサイズが書店様に喜ばれるという側面もありますね。書店様のスペースを圧迫しないので、置いてもらいやすいのは間違いないです。

また表紙もいいですよね。白一色ものでタイトルが分かりやすい。帯も含めて、編集部と営業部で変更するかどうかの話し合いを重ねましたね。

佐々木 そうですね。第4版の帯は2種類作りましたが、最終的には社内の意見も聞いて決めました。「スピードアップ」が伝わる良い帯になったと思います。

制作途中の帯デザイン。この2種類で協議の上、右のデザインに決定!

梅田 帯の変更も大変だったと思いますが、特に制作にあたって大変だったことはありますか?

佐々木 内部の話にはなりますが、スケジュールがかなり圧迫されていたので、意思決定を早める必要がありました。そのなかでWindows製品とGoogle製品でショートカットキーが違う点をどう表現するかが大変でしたね。

梅田 例えばWordにしか適用できず、Google ドキュメントに対応していないショートカットキーなどもありますよね。

第4版では生成AI、GoogleのOffice系サービスのショートカットキーを追加

梅田 この本は、2年以上ロングセラーが続いており、これまで何度も改訂をしていますが、4版ではどのような修正をしたのでしょうか。

【改訂とは?】
すでに発売された書籍の内容の一部を変更し、新しく出版すること。

佐々木  3版では388個のショートカットキーを掲載していたのですが、4版では402個に増やしました。2022年から現在にかけて、コロナを経て、ビジネス環境が変化したため、それに合わせて修正した形ですね。

例えば、4版では多くの人が利用しつつある、GoogleのOffice系サービスのショートカットキーを追加しています。「Google ドキュメント」、「Googleスプレッドシート」、「Google スライド」です。また、PDFの閲覧、編集などができる「Adobe Acrobat」のショートカットキーも追加しました。電子帳簿保存法が施行され、「Adobe Acrobat」のニーズが高まっていると思ったからです。

第4版で収録されているショートカットキーのカテゴリー

そのほか多くの人が利用しつつある、「ChatGPT」などの生成AI系のショートカットキーも追加しています。

梅田 今後の潮流も予測して加えたわけですね。ちなみに削除した内容はありますか?

佐々木 改訂3版をリリースした2022年当時は、コロナショックのまっただ中だったんですよね。リモートワークが広がったため、「Zoom」「Slack」「Google Meet」「Google Chat」のショートカットキーを掲載していました。ただ2024年現在、出社する文化が戻ってきているので、今回は削除しています。

また3版まではWindowsのバージョンごとのショートカットキーを記載していました。「バージョンアップにつれてショートカットキーも変わるのでは?」と想定していたからです。しかし実際はバージョンが変わってもキーは変化しなかったので、今回は省いています。

梅田 外部環境に合わせて「よく使われるショートカットキー」も変わるので、品質の担保という意味で改訂は重要ですね。

佐々木 そうですね。営業担当の梅田さんとしては、改訂にあたってメリットなど感じられていますか?

梅田 そうですね。書店に並べていただくうえで「書籍の鮮度」は重要です。例えば発売直後は目立つ位置に平積みにしていただいても、時間が経つとどうしても棚差し(本棚に入れ、背表紙を見せて陳列する方法)になっていきます。

その点、改訂し新たに発売することで、鮮度が高まりますので、営業担当としても書店の担当者様にプッシュしやすくなるので嬉しいですね。

佐々木 主にどういった方が購入されているのでしょうか。

梅田 第3版の段階では年代でいうと40代が40%、30代が20%と、30~40代で過半数を占めています。首都圏の大型書店や、駅なかの書店でよく購入されているようで、やはりビジネスパーソンの方が通勤途中に買っていただくケースが多いのかな、と。

佐々木 まさに編集部としても、想定通りの方に購入していただけているのかなと思いますね。

梅田 ちなみに初版(2014年刊行)、2版(2018年刊行)のときには6:4で男性のほうが比率が高かったのですが、2022年発売の3版では男女比が5:5となっています。

佐々木 この部分はおもしろいですね。近年「タイパ」という言葉が市場的に流行っており「男女問わず、あらためてショートカットキー本に注目が集まっている」という側面もあると思います。

SNSなどでもPC操作関連のタイパ術を発信するアカウントが増えている印象ですね。

梅田 そうですね。ちなみに第4版の帯にも「最強のタイパ術」というフレーズがありますね。

佐々木 はい。帯ではなく表紙に記載する案も出たのですが「タイパ」という言葉が古くなる可能性もあるので、帯にとどめました(笑)。

おすすめのショートカットキーとは

佐々木 突然ですが、梅田さんはショートカットキーでおすすめのものはありますか?

梅田 営業リストにフィルターを設定することが多いので、Excelの「Ctrl+Shift+L」は良く使いますね。売り場別の占有率などを見る際に良く使います。佐々木さんは今回の本で読者におすすめしたいショートカットキーはありますか?

佐々木 書店POPにも紹介しているのですが「Windowsでタスクビューを表示する」「ExcelやGoogleスプレッドシートで行、列を挿入する」「PowerPointやGoogleスライドでオブジェクトをグループ化する」「Adobe Acrobatで複数のPDFを横並びで表示する」の4つはおすすめです。

書店用のPOP

特に「Adobe Acrobatで複数のPDFを横並びで表示する」は電子帳簿保存法の施行に伴って追加した項目ですね。労務、財務などの方は必須のショートカットキーだと思います。

梅田 実際は業種・職種ごとに必要、または不必要なショートカットキーがあるため、自分の業務内容を振り返りつつ、取り入れていくことがベストですよね。

佐々木 そうですね。第4版には402のショートカットキーがありますが、もちろん全部は覚えられません。ただ、手元にあると、ふとしたときに活用できます。

私自身、最近なんとなく見返していたら「新しいフォルダーを作成する」ショートカットキー(Ctrl+Shift+N)を見つけて、業務効率が上がりました(笑)。

梅田 手元にあるだけで、見返せるのがショートカットキー本のいいところですよね。自分では効率化できていると思っていても、まだまだタイパを向上する余地はあるはずですので、この本を読んでぜひ業務に生かしていただきたいです。

佐々木 そうですね。時短が求められているなか、単純作業は最も時間がかかる部分だと思います。PC操作をする方みなさんに活用してもらえる本だと思いますので、ぜひ手に取っていただきたいです。

ー話を聞けば聞くほど奥が深い、ショートカットキー。梅田さん、佐々木さん、今日はありがとうございました。

(文:緒方優樹)

▼対談で登場した書籍
『できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典 改訂4版』
ショートカットキー事典で7年連続売上No.1※! Windows 10/11やExcel、Gmailはもちろん、GoogleスプレッドシートやAdobe Acrobatなどのショートカットキーを全402のワザに分けて掲載。好評の「倍速マーク」に加えて、絶対に覚えておきたい「必修マーク」も登場。楽しく覚えてショートカットキーをマスターできる! ※2018年1月~2024年6月 大手書店チェーン調べ

【対談者】
営業:梅田拓実
インプレスの出版営業部でマーケティングを担当。自社や競合商品を分析し、初版部数設計や販促計画を担当している。

担当編集:佐々木翼
インプレスでPC書を中心に担当する編集者。『はじめてでもできる! LINEビジネス活用公式ガイド 第2版』できるポケット 時短の王道 ショートカットキー全事典 改訂4版などを担当。