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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.9

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回2~3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

今回ご紹介するのは、『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』と『変な家』『変な絵』の3冊です!

猫を飼っている人なら2度見する

この本の核となるタンパク質「AIM」の発見と著者の宮崎先生の熱意、努力、出会い……いやそんな安っぽい言葉では語りつくせない紆余曲折のドキュメンタリーです。

本書では、現在の医療では<治せない>と言われている病気を治すことができる「AIM」の発見と医療に活かすための研究課程をまとめたものになっています。
ではなぜ書名が「猫が30歳まで生きる日」となっているかですが、AIMを病気の治療に使う最初のケースが「猫の腎臓病」であったからです。
猫は腎臓病になりやすく高齢になればなるほど、この病気は避けて通れません。本書では、猫がなぜ腎臓病になりやすいのかも、具体的な説明がなされています。

「AIM」の役割は、体内に排出される老廃物を「目印」を付ける。実はこれだけです。ただ、この目印があることで「貪食細胞(マクロファージ)」が老廃物を効率よく除去してくれます。そして、猫は人や犬と違って先天的に「AIM」が機能していないため、腎臓病は一種の遺伝病であることがわかりました。

そして、書名にあるように猫が30年生きる可能性も示してくれているのです。
猫の「AIM」が機能していないならマウスの「AIM」を投与してみればどうか? 結果として腎不全末期の猫に劇的な効果を発揮します。人工透析に相当する効果が出たとされています。
この治療薬はまだ医薬品としての承認が得られていませんが、薬自体は完成しているそうです。早く治療薬として動物病院で使えるようになってほしい。

『世界中のネコとそのオーナーさんをハッピーにしたい』

著者のこの願いはすべての猫飼いさんが待ち望んでいることでしょう。もちろん私もその一人です。(編集部・藤原泰之)


初めて読んだミステリー小説ってこんな感覚だったかも

中学2年生の息子に頼まれて購入。『変な家』は100万部突破のベストセラーで映画も絶賛公開中、『変な絵』も80万部突破の超人気作品ですが、息子に頼まれなければ、きっと手に取ることはなかったでしょう。

しかし、読んでみるとなかなか面白い。結局、私のほうが息子より先に読み終えてしまいました。

『変な家』は、ある家の間取り図をきっかけに物語が展開していくのですが、昔から間取り図を見るのが好きな私は、まずこの点で引き込まれます。近所にできる新築物件のチラシなどを見て、その間取り図から「この家だとこんな暮らしができそうだな」と想像するのって、ちょっと楽しいですよね。その想像を異質さやおぞましさと結びつけてくるのが新鮮でした。

一方の『変な絵』は、王道感のあるミステリーという印象。絵の仕掛けが明かされたときにギョッとしたり、生々しい残酷描写に戦慄したりと、美味しいポイントが次々にやってきます。ただ、個人的には『変な家』のほうが好みです。

いずれも数ページごとに間取り図や絵、状況を説明する図などのビジュアルが登場するので、とにかく読みやすい。小中学生に支持されるのも納得です。もっとも、小中学生にとっての入口は、書籍そのものではなくYouTubeなのだと思いますが。私も息子と一緒に、著者の雨穴氏の公式チャンネルや、ウクライナ人YouTuberのサワヤン兄弟が配信している「雨穴さん鑑賞シリーズ」を視聴済みです。「動画を見たリアクションを動画にするって何じゃそりゃ」と最初は思いましたが、こういうのもアリなんですねぇ。

息子にとって、この2冊は人生で初めて読んだミステリー小説になるわけですが、私もその頃の感覚を思い出したようで、貴重な体験となりました。ちなみに、私にとってのそれは『三毛猫ホームズの推理』で、以降にほかの作家へと手を広げていくことになるのですが、息子もさっそく東野圭吾氏と綾辻行人氏のタイトルを自分で選んで買ってきたようです。しめしめ。(編集部・小渕隆和)


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