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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.11

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回2~3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

今回ご紹介するのは、『怪物』と『会議でスマートに見せる100の方法』の2冊です。

「怪物」は自分自身なのか?

私はインターネットやテレビ等を通じて、日々世の中の出来事に触れていますが、偏りがないよう多面的に調べることを意識しています。1つの視点だけで物事を捉えてしまうと、本質からかけ離れたり、知らぬうちに差別・偏見をしたりと、さまざまなリスクや誤解を生んでしまうからです。それでも人間は感情に訴えかけられると、その「本質」を見逃してしまいがちなのだと、「怪物」を読んで思いました。

「怪物」は映画でも話題になった物語で、人間の内面に潜む闇や社会的な偏見、ステレオタイプを描いた作品です。物語は異なる3つの視点で語られており、1つの出来事がそれぞれの視点(息子、息子の母親、息子の担任の先生)で多面的に描写されています。普段は偏見がないと思っていても、描かれる視点によって思想に偏りが生じてしまうことが実感できる一冊です。とにかく読んでみてほしい、としか言えません。それぞれが持つ先入観や固定観念に気づかされ、それらを見直す機会を得られるのではないかと思います。視点の違いがもたらす誤解、その結果から生じる差別や偏見の恐ろしさが巧みに描かれています。

小説自体も306ページと短めで、サクッと読めます。私は映画を観てから小説を読みました。まずは映画を観てから、小説を読むのを個人的には推したいです。物語の本質や読者の受け止め方によってさまざまな解釈の仕方あるのも、この話のおもしろいところです。自分なりに考察するのも楽しめると思います。(編集部:佐々木翼)


真面目なビジネス書かと思いきやトンデモギャグ本……と思いきや一周回って深い教養本?

一昔前にSNSでバズりまくってたことがあるので知ってる人は知っているかもしれない問題(?)作。パッと見る限り一般的なビジネス書のような体裁をしているが、中身はドが付くほどのギャグ本。サクっと読めるし、とても笑えて面白い。頭のいい人が本気でギャグで笑わせてきたかのような、表紙やテーマと中身のギャップを楽しめる本だ。

あまり深くしゃべるとネタバレになるのでざっくりお伝えすると、この本で紹介している会議でスマートに見せる方法とは、文字通りスマートに“見せる”だけの本なので、本質的な意味が全くない。つまり、なんとなくそれっぽい意識高めな言動だけどよく考えたら「一体何を言っているんだこの人は…」と思われるであろう“方法”なのだ。だが、なぜだかそれがべらぼうに面白い。面白すぎる。自分一人で読んでもめちゃくちゃ笑えるし、友達と一緒に読んでも爆笑ものだろう。

ただ、「面白い」だけがこの本の真髄ではないと思っている。

確かに、常識の範囲内で考えるのであればこの本に書かれた“方法”は正直実用的なところはほぼほぼない。むしろ、状況次第では問題行動になりかねないラインすれすれ違和感ありまくりなものなのだ。だがしかしなぜだろう、この本を読んでいると「そんな方法実際には絶対活かせないでしょ!w 変な奴だと思われるw」と思っていても、でももしかしたら。いざ自分がふと気が緩んだ時に使われる立場になっていたら。案外見逃してしまうかもしれない。そして案外、その人に対して印象を良くしてしまうかもしれない.
この本を読んでいて、最初はただのギャグ本だと思って笑いを抱きつつも、そういうところにも衝撃を覚えた。

人間が他人に抱く印象や好感度なんて、案外単純なのかもしれない。簡単な言動一つで他人から見た自分の印象なんですぐにひっくり返る、そういう普段見落としがちが大切なことを、著者は我々に伝えたかったのかもしれない。(編集部・進藤智文)



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