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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.3

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』

いわゆる業界もののノンフィクション。事前に書籍レビューを見ずに、タイトル買いしました。
今や原油を超えた戦略物資とまで評される半導体を巡る戦いを描き出しています。
アメリカの半導体の成り立ち、日本の半導体覇権の興亡、そして韓国、台湾、中国の台頭が全体の流れ。加えて、AI向けの半導体分野における激しい競争や、コンピュータやスマートフォンの脳とも言えるマイクロプロセッサ分野でのインテルと英アームの攻防などが詳細に語られています。『ムーアの法則』の原点がわかり、多少のフィクションもありそうですが、現実はフィクションよりも面白い。
米中間の半導体を巡る攻防の見通しについては、詳細に論じられています。今後、重要な舞台となるのが台湾であり、中国の台湾政策の狙いの一つが半導体覇権にあることが描かれています。
専門用語も多いですが、翻訳が読みやすく、飽きずに最後まで読めました。半導体開発競争の歴史と現状、近未来の見通しを理解できる良書です。(MT)

『家が好きな人』

イラストレーター、井田千秋さんのコミックエッセイです。書店で見かけてずっと気になっており、先日、ついに購入しました。
幸せな香りが漂う朝食のパン、ちょっとビンテージなインテリアが集まったお部屋など、井田さんが描いたおうちのイラストがたっぷり詰まっており、素敵な暮らしの雰囲気に癒される一冊です。
本書を読み終えた翌朝は、パン屋へパンを買いに行き、いつもよりちょっと贅沢な朝食で、ゆったりとした時間を過ごしました。(MU)

『営繕かるかや怪異譚 その弐』

夏にぴったりの怪談集。シリーズ2作目となるこちらの小説もしっかり怖い。
建物にまつわる怪異を、営繕(建物を新築したり修繕したりすること)を生業とする青年、尾端が解決するお話です。
といっても、物語の主人公は怪異に悩まされるその土地に住んでいる人で、尾端はわき役として登場します。お化けやそれらしき現象と直接対話するというよりは、あくまで営繕屋として建物を修繕したり、土地の逸話を話したりして解決の糸口を見つけていくというスタイルが面白いです。
古い建物や家特有の、もの哀しい雰囲気と、怪異シーンの恐ろしさがなんともいえない読後感を与えてくれます。「ドキっ」ではなく、「ぞわ~」や「サァァ」という効果音が付きそうな怖さが好きな方におすすめです。(RU)