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『野田クリスタルのこんなゲームが作りたい! Scratch3.0対応』はどうやって企画したのか

こんにちは。11月4日(木)刊行『野田クリスタルのこんなゲームが作りたい! Scratch3.0対応』担当編集・渡辺彩子です。本noteでも以前立派なインタビュー記事を載せていただきました。

この記事では本書の企画を立ち上げたきっかけをお話ししようと思います。これまで考えてきたことが偶然とともに組み合わさり、できた思い出深い企画です。

本書の元々のきっかけは、さかのぼること少し前。

きっかけ①ヒット書籍を分析すると……

2021年2月に『サンラサーのココロとカラダが整うスパイスカレー』というレシピ本を刊行したのですが、

私にとっては初めて担当するレシピ本、それも群雄割拠の料理本市場ということで、自分なりにヒット書籍を分析してみたところ、売れている本には大きく3パターンあることがわかりました。

そのパターンとは、
①時短もの
→「10分でできる作り置きおかず」「鍋1つで〇品作る」といった時短を意識した書籍。読者は数字が大好き、と言われる通りのド定番。
②これまでにない切り口のもの
→「電子レンジだけで作れる」「絵本のお菓子を再現」など。料理レシピ本大賞2020を受賞したリュウジさんの『ひと口で人間をダメにするウマさ! リュウジ式悪魔のレシピ』(ライツ社)は有名ですし、最近では太田さちかさん著『不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ』(マイルスタッフ)が話題になりました。
③著名人・インフルエンサーが書いたもの
→有名料理家の方が執筆したレシピ本、人気タレントさんのレシピ本。滝沢カレンさんの『カレンの台所』(サンクチュアリ出版)も料理レシピ本大賞2021を受賞しましたね。

この中から1つ、もしくは複数をかけ合わせたものが結果として売れている、そしてかけ合わせが多ければ多いほど、書籍としての魅力が強まる感触がありました。

きっかけ②「野田さん好きなんだよね」

そして2021年2月、同僚が引っ越したとのことで新居に遊びに行ったとき。たまたま点けたテレビに出ていたマヂカルラブリーの野田クリスタルさんを見て、同僚が「野田さん好きなんだよね~」となにげなく言いました。また、野田さんがプログラミングやゲーム制作をされていることも聞き、そのイメージが心に残っていました。

白状しますと、私は高校の頃に『ボキャブラ天国』を好んで観ていたときから時が止まっており、いまのお笑いに詳しくなく、マヂカルラブリーさんが2020年のM-1グランプリで優勝されたことはうっすら知っていましたが、ネタを拝見したことはなく、野田さんがプログラミングをやっておられて、「野田ゲー」と呼ばれるゲームが人気なことも同僚に教えてもらうまでまったく知りませんでした。

しかし前述したように、要素のかけ合わせを意識的に考えていたことから、野田さん×プログラミング×ゲーム制作というキーワードがふと組み合わさり、その日から4日後、「野田さんのプログラミング関連の書籍を出したい」と思い至りました。では、ここから企画の練り上げです。

プログラミング言語は何にする?

まず考えたのは、書籍で扱うプログラミング言語です。というのも、野田さんの「野田ゲー」は「HSP(エイチエスピー)」というプログラミング言語で作られていますが、「あ、HSPね、知ってる知ってる」という人は決して多くはないだろうと思いました。

書籍はあくまで初級者向けの間口の広いものにしたい、子どもたちや初心者にも取り組みやすいプログラミング言語で、と考えると、いま人気の「Scratch(スクラッチ)」というビジュアルプログラミング言語にするのはどうだろうか、と行き着きます。

通常、プログラミングといえばひたすらコードを書くイメージがありますが、ビジュアルプログラミング言語は、ブロックと呼ばれる部品を画面に並べるだけでプログラムを作ることができるというものです。視覚的にプログラミングを行えることから、特に子どもたちや保護者から人気があります。こんなとっつきやすい言語でゲームを作れたらおもしろそうだな、そんな予感がしてきました。

廣瀬 豪さんとタッグを組んでもらう

次に、野田さんご自身はScratchを使われていないので、野田さんの単著ではなく、どなたかとタッグを組んで野田さんがScratchを学んでいく内容にするのはどうかと方向性が浮かんできます。

そして、タッグを組んでいただく方はどうしようか考えました。Scratchは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボと、非営利団体のScratch財団により、開発・運営されているプログラミング学習ツールで、誰でも自由に無料で使える(素晴らしい!)という特性から「教育用」としてのイメージが強く、Scratchの書籍は数あれど(弊社からも多数刊行されています)、教育関連の方が著者であるケースが多いです。

また、読者の対象年齢も小学5年生以上など低く設定されているため、登場するゲームも小さいお子さんでも作れるものが多くなります。しかし本書ではあえて妥協なしの超本格ゲーム制作をテーマにするとほかにはないおもしろさが出るのでは、と思うようになっていきました。

そこで依頼さしあげたのが、弊社刊行の『Pythonで学ぶアルゴリズムの教科書 一生モノの知識と技術を身につける』の著者である、ゲームクリエイターの廣瀬 豪(ひろせ・つよし)さんでした(ほかにもたくさん書籍を書かれているスゴ腕クリエイターです)。

同僚が本書を手がけていたことから廣瀬さんを紹介してもらい、オンラインでお会いしました。実は廣瀬さんは書籍を何冊も執筆されていながら、これまで顔出しをされていなかったので、どんな方だろうとドキドキしていたのですが、物腰はやわらか、でも腕は一流というまさにうってつけの方で、「おもしろそうですね」とご快諾いただきました。

また読者は、野田さんファンだけではなく、ゲーム制作をしたい人、プログラミング初心者をも対象にし、本格的なゲームがしっかり作れる内容を目指すことになりました。そこで、Scratchで「野田さんが本当に作りたいゲーム、あったらいいなと思うゲーム」をゲームクリエイターの廣瀬さんに制作してもらい、それをプレイしてもらい、書籍の中でその作り方をつまびらかにする、という内容に決定しました。

その後、野田さんの所属事務所の吉本興業さんに依頼をさしあげ、お受けいただき、撮影やら対談やらを通して制作を進め、無事に2021年11月4日に刊行されました。アクションゲーム、カーレース、格闘アクションゲーム、シューティングゲーム、アクションRPGとバラエティーに富んだ5本のオリジナルゲームを収録しています。廣瀬さんはじめクリエイターの方々には、ゲームや音楽、イラストの素材をご提供いただき、誠にありがとうございました。ゲームがちゃんと「超本格」ゲームになったのは皆さんのお力のおかげです。

最後に野田さんのオフショットをお楽しみください

本書のカバーや紙面には野田さんのお写真を複数使用させていただいています。これらの撮影では、野田さんのクリエイティビティーを存分に発揮していただき、短時間にもかかわらず、ゲームに出てくるキャラクターのイメージでたくさんポーズをとっていただきました。

ここでは本書未掲載の野田さんのオフショットをいくつかお届けします。野田さんファンの方、必見です!

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(廣瀬)「野田さん、そこですよ」(野田)「よしっここで攻撃だ!」

画像2

(野田)「いや、もう廣瀬さん、笑わせないでくださいよ~」

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本書に登場する「聖剣士ノダック」のイメージで。かっこいい!

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ゲームをプレイしているイメージで。これも素敵。

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おまけ。

実はScratchはとても優秀な言語ですが、どうしてもできないことも存在します。本書が売れたら続編で『野田クリスタルの~Python(パイソン)編』で「できないことがないゲーム」を作りたいので、ぜひ皆様、応援宜しくお願い致します。