【ゆるりと巡る大人の社会科見学 #2】編集者なら一度は訪れたい。本の在庫がそびえたつ巨大倉庫
1部屋で完結。コンパクトなPOD印刷
POD(プリントオンデマンド)印刷って知っていますか?書籍制作時に通常利用しているのはオフセット印刷です。版を作成して印刷する、大量印刷に適した方法ですね。
しかし書籍によってはページ数が少ないものや、部数も数十部~数百部と少量しか必要のないものもあります。それに適したのがPOD印刷。版を作る必要がないのでスピーディーに制作できるメリットもあります。
最近ではPODの品質もかなり向上しており、紙の種類をある程度選べ、書籍によってはオフセット印刷と比べても遜色のないものが作れるそうです。
ではさっそく見学させていただきましょう!通された部屋にはさまざまな機械がずらり。印刷から製本までを1つの部屋で行っているそうです。少部数に対応したPODならではですね。
まずは指示書をもとにデータをプリンターに飛ばして印刷が始まります。横に長いこちらのプリンター。とにかく高性能。こっそり値段もきいてしまいましたがびっくり……。種類別にトレイに紙をセットできるので、たとえば本を構成する見返し、扉、本文の紙をそれぞれ別のトレイにセットしておけば、1冊分の印刷を自動でやってくれます。高温でトナーを定着させると紙は伸縮します。それを防ぐために冷却装置も内蔵されているのだとか。
プリンターから数メートル離れたところにあるのは、断裁機や紙のずれを整える機械。紙のずれを整える機械を運転していただきました。マッサージ機のようにブルブルと振動させることでミリ単位のずれを整える仕組みです。なるほど、これは人の手ではできない作業ですね。
※動画を再生すると音が出ます。ボリュームにご注意ください。
続いては本の背に糊を付けて綴じる工程を見学。こちらも動画でご紹介。1部ずつセットすると、本がスライドしていきます。このスライドしているときに聞こえるギーンという音は、本の背を削って筋を入れている音です。1.5mmほど削って糊がなじみやすくしているそうです。削られた背に糊を付けて本の形になります。そのあとは製本機(三方を断裁する機械)で天地や小口の余白をカット。工場見学の醍醐味ですが、どんどん本が仕上がっていく工程が間近で見られるのは感動ものです。
最後にカバーをラミネート加工する機械を見せていただきました。1台でマットとグロス両方の加工ができるそうです。注目したいのは排紙トレイの部分。カバーの見返し部分など、長さのあるものにも対応できるようにDIYで木の板を継いだそうです。ちょっとした工夫が垣間見える一場面でした。
いよいよ倉庫見学へ
ここからは移動して書籍の在庫を保管している巨大倉庫、戸田ロジスティクスセンターに向かいます。印刷所からは車で10分ほど離れた場所にあります。さまざまな出版社が利用しており、在庫量はなんと3,000万冊!この倉庫で商品の入出庫や取次への配送、返品された商品の改装などが行われています。
インプレスの在庫区画に移動中、インプレス商品の搬入作業に遭遇。「インプレス」と印字された専用のコンテナがあるんですね。ここから取次先やネット書店などに商品が運ばれていきます。
そして偶然にも、書店から返品されたインプレス商品の入庫作業も目にすることになりました……。もちろんこの返品から再び書店に並ぶものもあると思いますが、返品は返品。フォークリフトで運ばれていくコンテナを、一同肩を落として見送りました。
在庫のフロアに到着。そびえたつ在庫の山は圧巻です。インプレスの区画だけでこの量ということなので、施設全体の在庫量が3,000万冊というのもうなずけます。ここからまた受注に合わせて大量の書籍が全国に飛び立っていくわけですね。
そして、最後に返品商品の区画も見学させていただきました。こちらも大量。数字で見るのと実際の物量を見るのとではまったく違いますね。無意識のうちに自分が担当した書籍を探してしまいます……。改装して商品として再び書店に並ぶものもあれば、廃棄処分となってしまうものもあります。担当した書籍を見つけたときは切ない気持ちにもなりましたが、戒めの意味としても見学できてよかったです。
さて、今回の見学はここまで。編集者にとってはいろんな意味で勉強になる見学ツアーでした。自分の担当した書籍が形となったそのあとのこと、配送されてまた戻ってきて……物流の現場を目にする貴重な機会をいただきました。
京葉流通倉庫のみなさま。長時間にわたりPODの仕組みや倉庫をご案内くださりありがとうございました。