【コダワリ #11】ショッピングセンターの歴史を観察する
「一期一会」がモットーなので、「コダワリ」というものは特になく人生を過ごしてきたのであるが、敢えてあげるとすれば、「ショッピングセンター(以下、SC)巡り」ということがあるだろう。現在の書店は「SC」のテナントが多く、書店営業というよりもSC訪問、という意味合いで仕事と趣味を兼ねているのかも知れない。
興味のない人からすれば、ショッピングセンターは「金太郎飴」に見えるかも知れないが、それぞれに歴史、また、立地による差がある。例えば「イオン」でくくられてしまっているSCにも「ダイエー」「ジャスコ」「ユニード」(その他にもあるが)といった出自があり、改装を経てもなお、その痕跡は残されている。
構造から見るSC
写真は、「チェリオ」というSCであり、キーテナントはイオンである。ここは、茨城県鹿嶋市にあり、ジーコ広場(サッカーの著名選手を讃えた場所)があることで知られている。1994年5月オープンで、ちょうどJリーグ開幕の直後にあたる。構造は縦長になっており、当時の回遊性を高めるとされていた設計を今でも保っている。エスカレーターは日立製なのが「イオン」の常識(三菱製かフジテック製が大半なので)からすると意外なのだが、元々が「イオン」として建てられたわけではないので、そのような「ミスマッチ」が起きている。また、大店法プレート(大規模小売店のプレート)が「歴史の痕跡」を語っているSCもあり、まずはそこを見に行くというのがSC観察の第一歩である。
書店営業という立場上、バックヤードに入ることがある。一般的なお客様が入ることができる部分というのは、改装を重ねていくことで変化するが、バックヤードは通常、完成当時の姿を残しており、その時の設計思想やあるいは(推測するに)さまざまな「政治的なお話」で決まったのであろう、と思われる部分が残されている。よって、現在の動線的には使いにくいものが多かったりするが、それはそれで「その当時はどうであったのだろうか」ということを思い起こすのにはいい材料である。
SCに行ったらチェックしたいポイントとは
表側のチェックポイントとしてはやはり天井であろう。天蓋が塞がれているのか、開いているのか、全国でそれぞれ異なっていたが、最近は塞がれているものが多い。有名な(?)ところでは西武函館店としてオープンした、現在のテキサス函館であろうか。最近は塞がれてしまっているが、かつては「天窓がある百貨店」として異彩を放ち、夜には星が見えるという趣きがあった。
また、照明もチェックポイントである。近年はLEDが大半となってきたが、蛍光灯時代であれば、照明のメーカーを確認することで、その建設費用の予算感を推測することも可能であった。また、照明の照度によって、想定している客層がわかるというものもあった。
SCにも種類がある
SCは大きく3種類に大別でき、要するに「日常使い」「土日用」「晴れの場」ということになる。それら性格によって当然、入居テナントも変化するわけだが、その上でさらに、商圏内の購入客層の収入帯を推定するためには、「チーズの価格帯」のチェックが欠かせない。これは日持ちし、また、比較的値崩れがしない商品であるがゆえに、「どの価格帯までのチーズを置いているか」によって客層が推定できる。もちろん、アパレルや化粧品のブランドのラインがメインなのかセカンドなのか、といったところも重要である。
もちろん、客層を見るには、駐車場チェックは欠かせない。ナンバーから商圏距離を測り、車種から収入層を把握する。また、自転車の台数を確認することで、近距離需要が把握できる。そして、駐車場内の動線がどうなっているかによって、「使いやすい」「使いにくい」SCが判別でき、10年後の未来予想図を予測することができる。
現在は怪我をしてしまっておりなかなか巡ることができないが、このようにSC1つ取って見ても、様々な「歴史」が詰まっている。また、雨を気にすることなく、その中を徘徊することで一定の運動をすることができ、健康にも良い。快復の後には、書店営業という大義名分の下に、この趣味を復活させたいところである。