書籍・Web編集者 小渕隆和 社歴20年のベテラン編集者から見える景色とは【インプレス出版人図鑑】
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書籍・Web編集者 小渕隆和 社歴20年のベテラン編集者から見える景色とは【インプレス出版人図鑑】

Web編集と書籍編集を同時並行で担当

――今のお仕事を教えてください。

現在は『できるネット』の運営や、ビジネス書などを作る編集部で編集長をやらせていただいています。『できるネット』はパソコン解説書『できるシリーズ』のWebサービスで、スマホやOfficeアプリ、Googleのツールなどの使い方を解説しているサイトです。編集部からの発信に加えて外部のライターも入れ、毎日更新しています。また『できるネット』と同時並行で、編集部として年に7、8冊の書籍を作っています。

検索エンジンのディレクトリ制作を経てインプレスへ

――社歴が20年とお伺いしました。まずは入社するまでの経歴を教えていただけますか。

大学のゼミではマーケティングを、アルバイトでは大手出版社の月刊誌でライターをしていましたが、その頃はまだ編集者になりたいという気持ちは固まっていませんでした。大学を卒業後、検索エンジンを運営するベンチャー企業で2年間働きました。
現在はGoogleなどのロボット型検索エンジンが主流ですが、当時は検索の精度が今ほど優れていなかったので、ディレクトリ型検索エンジンが主流でした。ホームページも玉石混交で、一流企業ですら公式サイトがない時代。人の目で「これは見る価値がある」と思ったホームページを見つけてきて、説明文をつけてカテゴリー分けし、検索できるようにするのが私の仕事でした。経済やビジネスのカテゴリーを担当していたのですが、そこでインプレスのサイトとImpress Watchを見つけたのが転職のきっかけです。
インターネットに将来性を感じていましたし、ディレクトリを作る仕事がどこか編集に似ている気がしたんですね。人にお勧めできる情報を探してきて、文章で説明してカテゴリーに加えるという仕事が好きだったので、本格的に編集をやってみたいと思いました。

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昔ながらの雑誌編集から始まりWebの担当に

――その頃のインプレスはどんな感じの会社だったんでしょうか。

2001年に入社する前は、“イケてるインターネット系ベンチャー”といった感じに見えたんですが、入社してすぐ配属された月刊誌の編集部では思いのほか泥くさい仕事をしていました。仕事での徹夜は普通で、朝出社すると泊まり込んだ社員が机の下から出てくるみたいなことも日常茶飯事。写真もカラーポジの時代で撮影に時間がかかり、本当に大変でした。
雑誌や単発のムックを作る部署を経てから、年賀状の素材集を作る部署で4、5年過ごしました。当時パソコンで年賀状を作る人が増えていたんですね。素材集では「紙面に素材をどう並べて見せるか」が重要なのですが、今と違いパソコンのディスプレイが小さくて見にくかったので、すべての素材を印刷してから切り貼りして見開きページの見本を作っていく、アナログな作業での本づくりでした。
そこから本とデジタルの連動企画をする部門に加わり、無料の電子版PDFが付く書籍や、現在の『できるネット』に至るWebサイトのリニューアルなどを担当しました。

書籍とWebの世界、大きな違いは読まれ方

――雑誌・書籍とWebの世界を両方知っている小渕さんの目からみると、両者にはどんな違いがあるんでしょうか。

Webの場合は短い時間で読まれるコンテンツ作りを意識します。電車に乗っている間だけ、エスカレーターに乗っている間だけちらっとスマホで見るような記事の読まれ方をするので、1記事1記事で短く完結しているようなコンテンツ作りになりますね。またWebだと、美味しい情報を記事の冒頭に持っていかないと「これは自分には関係ないや」とすぐに離脱されてしまうので、そのあたりの構成にも気を使います。
一方で、書籍は一冊の中にひとつの大きなストーリー、大きな流れがある読み物です。つまみ読みも、じっくり読んでもらうこともできる。Webは無料で読めますが書籍はお金を出して買ってもらうので、読者の方のコンテンツに向き合う温度感にも違いがあるように感じますし、お金を出す価値のある本にしなければと常に心がけています。
Webの世界は書籍より歴史が新しいからか、少し軽く見られがちだなと感じるときもあるのですが、WebにはWebの難しさがあるので、書籍とWeb、それぞれにやりがいがありますね。

著者とのいい出会いがいい書籍につながる

――書籍はどんなところから著者を発掘されるんですか?

すでにお付き合いのある著者の方からの紹介が多いですが、自分でネットの中を探すこともありますし、セミナーやイベントで見つけた方に自分からアタックすることもあります。
著者の方との出会いというのは本当に大事だなと思っています。今はデジタルマーケティングの本を多く作っていますが、著者になってくださるマーケティング会社の方などは本業が普通に忙しいんです。それなのに「こういう本を世に送り出したい」と熱意をもって本を書いてくださっているので、担当する編集者としても気が引き締まります。文章のプロではないのでライティングをサポートする必要はありますが、それ以上にいろいろなことを学ばせていただいています。中でも、2015年に出した『できる逆引き Googleアナリティクス』は、本を作りながらWebサイトの解析について深く学ぶことになった思い出深い書籍です。デジタルマーケティングの面白さを教えてくださった著者の木田和廣さんとは、今でもずっと親交があるんですよ。
もう一冊、『ネット広告運用“打ち手”大全』という書籍も、記憶に残る書籍です。著者の3人(寳 洋平さん、辻井良太さん、高瀬順希さん)はネット広告のコンサルタントとしてその道でも有名な方で、出版後に開催したセミナーにはたくさんの読者の方が集まりました。

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書籍を作っていても、読者とダイレクトに交流できるチャンスはそうそうありません。この本の読者は実際に企業でデジタルマーケティングを実務でやっている方ばかりだったので、「こんなことで悩んでいます」というリアルなお話を聞くことができたのは貴重な機会でした。
この本のブックデザインは、数々の大ヒット本を手がけているデザイナーの吉岡秀典さんにお願いしたのですが、カバーの用紙、帯の用紙、本文の用紙など、すべてに手書きで細かい指示が入れられている造本の指示書をいただきました。デザインに関するここまで詳細な指示は編集者人生で初めてでしたが、出来上がった本は、内容もデザインも素晴らしい書籍になりました。

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編集者としては「若い読者の攻略」が鍵

――編集者としてのやりがい、そしてこれからの展望はありますか。

今は世の中のスピード感も早いし、解析ソフトなどのツールの進化も早いんです。そこが大変な点でもあり、次の企画を出したいと思う原動力にもなっています。
また、デジタルマーケティングは、新しい読者、若い読者がどんどん入ってくる分野だと感じています。学生から社会人になると、デジタルマーケティングにビジネスで関わるのは当たり前の時代。今の若い人たちが何をやりたいのか、どんな情報が欲しいのか、どうやったら書籍を読んでくれるのだろうか、ということはいつも考えています。
もちろん読者層だけではなく著者も、みなさん私より若い方ばかりです。「若いのに実力があるすごい著者」を発掘するのも、やりがいのひとつといえますね。そして、そんなすごい人と一緒に仕事ができるのは、編集者の特権だと思っています。著者の方々との出会いを大事にして、よりよい本づくりにつなげたいですね。

会社の好きな部分は「先進的であろうとするところ」

――小渕さんにとって、会社の良さはどんな点でしょう。

インプレスは、先進的なことが好きな会社だと思うんです。最近では完全なリモートワークが可能になり、それにあわせてオフィスを一新する出来事がありました(下の写真は改装したオフィスの一部)。その「先進的であろうとするところ」が昔からたまらなく好きなんです!20年前はパソコンのことばかり考えている人が多かったような印象がありますが、最近では未経験で異業種から入社される方も多くて、そういう新しい空気を入れようとするところもとてもいいですよね。いろいろな人に刺激をもらいながら、これからもいい書籍、いいWebサイトを作っていきたいと思っています。

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プライベートは子どもと遊んでリフレッシュ

――休日にはどんなことをして過ごされているんでしょうか。

休日はずっと10歳の息子と一緒に過ごしています。子どもと遊ぶのが趣味のようになっていますね!今はなかなか外出しづらいので、オンラインゲームの『フォートナイト』で遊んでいます。
プログラミングに興味を持ってくれたらいいのにと、さりげなく本を置いておいたりするんですが、まだゲームだけに関心が向いているようで残念です(笑)。

――ありがとうございました。

【インプレス出版人図鑑】は、書籍づくりを裏方として支える社員の声を通じて、インプレスの書籍づくりのへ思いや社内の雰囲気などをお伝えするnoteマガジンです。(インタビュー・文:小澤彩)
※記事は取材時(2021年9月)の情報に基づきます。



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