書籍編集者・馬場はるか クリエイターと丁寧に向き合い、支え合う関係に【インプレス出版人図鑑】
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書籍編集者・馬場はるか クリエイターと丁寧に向き合い、支え合う関係に【インプレス出版人図鑑】

入社以来ずっと同じ編集部で書籍編集を担当

―――今のお仕事を教えてください。

2013年にインプレスに入社してからずっと現在の編集部で書籍編集の仕事をしています。年間2/3はカレンダーと年賀状素材集といった季節商材を、残りの1/3の期間で書籍編集をしています。今までは年賀状素材集2~3冊、カレンダー6~7タイトルを担当していましたが、今年はカレンダー14タイトルとすべてのカレンダー関連の宣伝販促業務をひとりで担当しました。

「もう辞めよう」そう思いながら作った本が次へ進むきっかけに

―――入社して3年目の頃、会社を辞めようとしていたとお聞きしてビックリしました。

今はとても雰囲気がよくて大好きな編集部ですが、その当時は入社して間もないこともあり、困ったことがあっても誰にも相談できず、ひとりで抱え込んだまま孤独な作業を続ける毎日でした。仕事量の多さもあって精神的につらくなり、本気で退職を考えていました。
当時私は、年賀状素材集の合間にようやく2冊目となる自分の企画を担当していました。1冊目の担当書籍はもともと先輩から引き継いだ企画だったため、「自分の企画は必ず出してくださいね」と言われたものの、2冊目の企画がなかなか通らないつらさも味わいました。そんな中、ようやく通った初めての企画が『水彩・色鉛筆・クレヨン ふんわりやわらか手描き素材集』だったんです。ところが、社内会議で企画意図がなかなか伝わらず、「いったいどうすればいいんだろう」と頭を抱えながら必死に作ったのを思い出します。
その当時は「この本を出したら会社は辞めよう」と転職サイトに登録するほど悩んでいましたが、結果的に退職を思いとどまることになったのもこの本のおかげでした。

―――辞めたいと思いながら本を作るのって苦しくなかったですか。

本当に苦しかったです。でも一緒に頑張ってくれた3人の作家さん、デザイナーさんとチームになってやり取りを重ねながら、なんとか本を作り上げ、いざ出版されたらすぐに重版がかかって「私のやっていたことは間違っていなかったんだ」とホッとしました。仲のよかった先輩にも「売れてよかったね!」と褒めてもらい、一緒に本を作ってくれた作家さんに「また一緒にお仕事できたらうれしいです」と言ってもらえたことも本当に嬉しかった。「もうちょっとこの会社でやってみよう」と考え直し、転職は思いとどまりました。
結果的に、今もまだこの本は売れ続けていて、8刷を重ねるロングセラーになっています。

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素材集のシリーズ展開もおこなっている

この9年の間に会社も変わった気がするし、自分も変わった

―――今年で入社9年目になられたんですね。この数年で、会社やご自身は変わりましたか。

編集部の会議はなかなか厳しくて、ダメな企画にはずばずばと意見を言われます。女性社員の共感を得られて、その上の社内会議に持っていけても、今度は男性社員の共感がうまく得られなくて企画が未承認になってしまう……。そんなことも何度もありました。でも、ここ数年の間に、女性向けの書籍を手掛ける部署ができたり、他の編集部でも柔らかい企画の書籍が出されたりと、会社の方向性が変わってきたなと感じます。
そして、私自身も変わりました。これまでは自分の好き嫌いや思いつきだけで良い悪いを判断して企画を出していたのですが、企画が通らないのには理由があることがわかってきたんです。会社のこと、利益のこと、市場のこと、コストのこと、重版がかかるかどうかや、読者から求められているか……。そうしたことが多少は理解できるようになってきました。ほかの編集部員の企画に意見するときも、「ここがいい」「ここが良くない」と感じるのはどうしてか、理由をつけて説明できるようになりました。

―――馬場さんはほかにどんな本を担当されたのでしょうか。

『海外名作映画と巡る世界の絶景』も私が担当しました。子どものころから大好きだったハリーポッターの関連書籍をいつか手掛けたいと思っていたのが企画の原点です。ハリーポッターを含むいろいろな映画の名シーンが撮影された場所を、映画のシーンと一緒に紹介する内容です。スマホでバーコードを読み取ると地図を見られるようになっていて、バーチャル旅行が楽しめるようにしました。
実は私は小さいころから活字が好きではなく、あまり本を読まないのですが、全巻揃えて全部読み終えることができた初めての本がハリーポッターシリーズです。私自身、海外旅行が好きで、旅先で映画のロケ地をめぐることも多かったことから企画がスタートしました。この企画を持って行ったストックフォトの営業さんが映画好きな方で、「私も一緒に企画を成功させたいです!」と言ってくださり、写真集めや権利の許諾で手を尽くしてくださいました。実は私自身が現地に行って撮影した写真もいくつか掲載しているんですよ。
この本もおかげさまで版を重ねられており、読者の方から熱い感謝のお手紙を頂戴することもある思い入れのある1冊です。

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海外名作映画と巡る世界の絶景

作家に対して丁寧に向き合うのが馬場流の仕事術

―――企画はどのようなところから思いつくんですか?

自分の興味や関心がきっかけになることが多いですが、最近は年賀状素材集の作家さんから持ち込みで企画をご相談いただくこともあります。「馬場さんと一緒にやりたいので」と言っていただけることもあり、とてもありがたいです。

―――「馬場さんと一緒にやりたい」と作家の方が言ってくださる理由は何だと思いますか?

そうですね……。自分ではよくわからないですけれど、作家さんやクリエイターの方との接し方で気を付けているのは、丁寧にやりとりを重ねていくということです。
私の思うことを押し付けてしまって、作家さんやクリエイターの方の作風がつぶれてしまうのは本意ではありません。例えば、作家さんから上がってきたラフを見て、方向性を修正したほうがいいだろうなと感じる時には、「こういう部分をプラスしたら、今の流行も反映できそうに思いますがいかがですか?」と、きちんと理由が分かる資料を添付して、お戻しするよう心がけています。そのために、普段から書籍づくりの参考になりそうなものがあれば、スマホで写真を撮ったり、資料をスキャンしたり、ネットで参考になりそうな記事や画像を見つけたりして、作家さんと具体性を持ってお話できるように準備しています。

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―――それだけ細やかな配慮をしながらお仕事されていると、とてもお忙しいのではないですか?

確かに、仕事量は以前よりもずっと多くなっていますね。でも、昔と比べて「どこで力を抜いたらいいのか」がわかるようになってきたので、作業効率が上がったと思います。あとは、部署の人間関係がすごく良くて、すぐに誰かに相談しやすくなったというのもありますね。ひとりで悩んでため込んで……というよりは、少し悩んだら軽く誰かに相談に乗ってもらえる環境なので、仕事量は多くても前とはかなり違いますね。
年賀状素材集2、3冊、カレンダーも14冊を担当するとなると、やりとりするクリエイターさんも大人数になります。どのクリエイターさんに何を依頼したか、メールのやりとりもすべて細かく把握し、対応する必要があります。絵柄を選んだり、指定を入れ、カレンダーのデザインも進めたりと、春ごろから9月、10月の発売時期まで、とにかく目まぐるしく仕事が続いていくんです。あと書籍の編集以外にも、編集部で作った本のツイッターやインスタなどのSNS、Amazonの商品紹介といった宣伝や販促の仕事も担当しています。こうして毎日何らかの締切に追われている日々を送っていると、仕事に終わりが見えなく思えるときもあります。
ただ、宣伝にも気を抜かずに取り組んだ結果、ここ数年はカレンダーの売上も対前年比100%以上で推移できていて、やったことはちゃんと結果となって返ってくるという実感や手応えも感じています。

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担当したカレンダー(FLOWER FAIRIES Calendar 2022/シマエナガちゃん CALENDAR 2022)

活字だけが本じゃない。見て感動できる本を作りたい

―――編集者として、これからどんな本を作っていきたいですか。

もともと活字が好きではない私からすると、活字を読むのではなく見て楽しむことに重きを置いた本も大事ではないかと思えるんです。編集者になっていなかったら私は書店にもほとんど行っていないでしょう。そんな人でも、手元に置いておきたい、飾っておきたいと思ってもらえるような本を作っていきたいです。紙面の見せ方ってもっといろいろあると思うし、活字がなくても、感動したり楽しんでもらえる本は作れるはず。Webに関連付けたり、動画と連動させたり、本だけじゃなく「本+α」みたいなものが作れたら、書籍にももっと広がりができると思うんです。

―――最後に、多忙な馬場さんのプライベートでのリフレッシュ法を教えてください。

柏レイソルのファンなので、試合を見に行くことが私のリフレッシュ方法です。以前は毎週末サッカーがあって、ゴール裏でジャンプしながら「チャント」を歌って応援していたのですが、今は声を出しての応援もできない時期。ルールを守って、叫ばず、声も出さず、ジャンプもしないで、ただただ推しの選手を応援しています。

―――馬場さんの素直な言葉と飾らない人柄に惹かれる作家の方もきっと多いのだろうなと感じました。本日はありがとうございました。

インプレス出版人図鑑】は、書籍づくりを裏方として支える社員の声を通じて、インプレスの書籍づくりのへ思いや社内の雰囲気などをお伝えするnoteマガジンです。(インタビュー・文:小澤彩)
※記事は取材時(2021年11月)の情報に基づきます。


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