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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.4

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から」では、毎回3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。

古文の授業を受けたあの頃に出会いたかった一冊

来年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の予習として平安時代をテーマにした本を読んでおり、本書もその中で手に取った1冊です。清少納言がいかにしてかの有名な『枕草子』を書くに至ったのかが独白形式で語られます。
和歌や漢詩を通じて主の定子と絆を深めた日々や、権力争いに負けた側である定子の栄枯盛衰を遠くから見ているしかない哀しさなどが淡々と描かれ、判官贔屓もあって彰子・紫式部よりも定子・清少納言の主従を応援したくなり、来年の大河ドラマを素直に見られるのかが今から心配になりました。

また別の著者の本ですが、同じように独白形式で紫式部が『源氏物語』を描くまでを描いた『紫式部ひとり語り』と読み比べるのも面白いです。(◯)

ネタバレ厳禁! ラノベ感覚でスラスラ読める本格SF長編

『火星の人』(映画「オデッセイ」原作)のアンディ・ウィアーによるSF長編3作目です。彼の『火星の人』や『アルテミス』では火星や月が舞台となり、リアルな設定によるサバイバルストーリーが描かれました。しかし本作では、地球を救うために「未知の物質」を巡る謎を解き明かしていく、という広大な宇宙を舞台に繰り広げられるストーリーが展開されます。これまでとは一線を画すスケール感に、はじめは「ウィアーどうした!?」と少し驚きました。
ウィアー作品は、主人公自らの知識や技術を駆使して、ときには失敗を重ねながらもユーモアを忘れず、難題を解決していく姿、そして軽妙な語り口についつい引き込まれていきますが、それは本作でも健在。「未知の物質」というSFらしい題材も、科学的に納得感を感じさせながら正体が明かされていきます。
「読んでいてストレスがない」ことも、わたしがウィアー作品を好きな理由のひとつ。『火星の人』のマーク・ワトニー同様、本作の主人公も紛れもなく良い人キャラで、ストーリーを邪魔するような敵や仲間キャラも登場しないので、ストレスなく楽しめます。
ネタバレ厳禁のストーリーのため、レビューなどは見ずに読まれることをおすすめする本作ですが、ライアン・ゴズリング主演で映画化が進んでいるようです。SF映画の質はバラつきがありますが、映画「オデッセイ」が素晴らしい作品だったことを考えると、本作にも期待が高まります。(やぎ)

猪木の言葉がぼくの背中を後押しする

2022年10月1日に亡くなったプロレスラー、アントニオ猪木の語録をまとめた本。

金曜8時放送の「3年B組金八先生」が大ブームになっていた中学生のころ、ぼくは裏番組のワールドプロレスリングに釘付けだった。燃える闘魂アントニオ猪木、世界の荒鷲坂口征二、ドラゴン藤波辰爾、革命戦士長州力などのプロレスラーが繰り広げる熱き戦いに夢中だった。家の近くで興行があれば、親に頼んで見に連れて行ってもらった。5歳上の兄とはプロレスごっこで卍固め、コブラツイスト、サソリ固めなどの技を掛け合い、たまにムキになった。

そんなプロレス好きなぼくにとって、永遠のヒーローと言える猪木の言葉が、ぼくに勇気をくれる。「バカになれ!」「元気があればなんでもできる!」などなど。そして迷ったときにいつも頭に浮かぶのは、猪木が引退スピーチで語った「道」。

「この道を行けばどうなるものか」

から始まる詩はいつでもぼくの背中を押してくれる。猪木は死んでしまったけど、素晴らしい戦いを、元気が出る言葉を、ほんとにありがとう!(たかし@行けばわかるさ)