監修者×編集者対談|メディアや芸能界で引っ張りだこの有名美容師に聞く、おうちヘアケアの極意
「髪の守護神」と呼ばれる美容師が、誰でもできるヘアケアを伝授
田中淑美(以下、田中) お風呂前のブラッシングから始まり、正しいシャンプー/トリートメントの手順、キレイな髪になるための乾かし方、マッサージ方法、スタイリング剤の選び方、髪の悩み対策に至るまでヘアケアの基本をすべて詰め込んだ本が出来上がりました。
砂原由弥さん(以下、砂原) 今回の本はタイプの違う3姉妹が抱える髪の悩みを私が解決していくストーリーになっています。それぞれ抱える髪の悩みはきっとどんな女性にも思い当たる部分があると思うし、絶対に共感してもらえるような楽しい本になっているのでとってもおすすめ。私もこの本に関わることができて楽しかったです。
田中 企画を立ち上げたのはコロナ禍真っ只中で誰もがマスクをしていた2022年のときでした。マスクのせいで鼻から下が隠される分、顔の上側の印象が強まることで髪について気になり始める人が多かったんですよね。例えばWeb会議でパソコンのモニターに映し出される自分の髪の広がりやぺたんこ具合が気になる……という声が増えていた時期で、ヘアスタイルについての世間の関心が高まっていました。そこで誰でも気負わず手軽に読めるヘアケア本を作りたいと思い、砂原さんにお声がけさせていただきました。
美容師さんは数多くいますが、砂原さんほどの美容師さんにはなかなか出会えません。砂原さんの魅力は長年の経験による確かな知識を持っていることに加えて、すごくポジティブで前向きなメッセージを発信されていることにあると思います。サロンワークに加えてドラマや映画、広告のヘアメイク、講師を務められるなどお忙しい砂原さんですが、実はとっても気さくでヘアケア初心者が相談しやすい雰囲気をお持ちのところが、企画にぴったりでした。
砂原 田中さんは、美容師でありながらテレビや雑誌のヘアメイクとして活動している私の仕事のスタンスや、これまでの仕事・活動内容を評価してくれました。ありのままの私の言葉を書籍で取り上げたいとのことだったので、素直な気持ちで引き受けることができました。
「髪が変われば人生が変わる」から、自宅でのケアがおすすめ
田中 女性なら誰しも、10代のころから絶えず髪を気にしているものですが、正しいヘアケア法を知っている方は多くありません。そんなヘアケア初心者さんに楽しみながら読んでもらいたくて、マンガ形式を採用しました。主人公はアラサー~30代の、髪質もライフスタイルも違う3姉妹。砂原さんの「髪が変われば人生が変わる」という言葉が読者の方にも感じてもらえて、ヘアケアが好きになってもらえるといいのですが……。
砂原 「髪が変われば人生が変わる」は、美容師になって30年、のべ15万人ほどの方の髪の相談にのってきた私の実感です。人は誰しも、人生の分岐点で髪型を変えることって多いでしょう。恋人ができないからもっとかっこよく、可愛くなりたい。芸能の仕事で成功したい……。
一般の方、芸能関係の方、それぞれに希望や夢があって、それを叶えるために精一杯美容師としてお手伝いしていくと、髪型を変えたおかげで自分に自信が持てて、素敵な恋人ができ翌年結婚しちゃうとか、芸能人として人気が出てどんどん上のステージに上がっていくとか。まさに、髪が変わると、気持ちが変わり、人生が変わっていけるんです。
女性は気分次第でどんどんキレイになれるんです。月に1度、美容師を頼るだけで終わらず、家でも自分に合ったヘアケアをしているとどんどんキレイになれますよ。でも忙しい人も多いから、自分の生活に合わせて、ケアをやらない日があってもいいし、週1回、もしくは月に1回だけでもいいの。自分に合ったケアを知ることで、髪がキレイになると同時にメンタルも磨かれていくんです。
将来どうなりたい?「自分自身に向き合う時間」がキレイを作る
田中 砂原さんはヘアケアで一番大事なことはなんだと思いますか?
砂原 そうですね。「自分と向き合う時間を作って、自分がどうなりたいかをイメージする」ことだと思います。例えばシャンプーひとつとっても、何も考えずに子どもの頃からのルーティンのようにとりあえずシャンプーしている人も多いでしょう。でも、シャンプーするときに何を大事にするのかを今一度考えてみてほしいです。大事なのは汚れを落とすこと? 頭皮をマッサージすること? シャンプーでリフレッシュすること? そうやって、自分にとって何が必要なケアを考えるところが出発点。全部完璧にやらなくてもいいんです。今の自分に合ったヘアケア法を本の中からチョイスして実践してもらえたらいいかなと思っています。
田中 「疲れていたらシャンプーせずにヘアマッサージだけで寝てOK。翌朝にシャンプーしましょう」という言葉は気持ちが軽くなりました。シャンプーし過ぎない、洗いすぎない、アイテムを使いすぎない。まさに砂原さんの言葉でいうところの「シンプル革命」ですね。
砂原 日本人は髪を洗いすぎ(笑)。自分が疲れているときは無理せず省けるものは省く。そんないい加減さで構わないと思うんです。全部自分のためだもの。なりたい自分を考えながらそのときの自分にできること、やりたいことをやってみる。そんな感じでいいんですよ。
お風呂に入る前のブラッシングも解説しましたが、これはメリットしかないのでとってもおすすめ。肌に優しいブラシを使って頭皮をブラッシングすると頭皮の活性力を高められるし、リラックスできる。ツボ押し効果も頭皮環境の改善も期待できるので、ぜひこの本を片手にトライしてほしいです。
美容師ジプシーを卒業したい!美容師選びの極意とは
田中 美容師さんといえば、なかなか自分にしっくりくる美容師さんに出会えず困っている人も多いと思います。どんな観点で美容師さんを選べばいいのか、アドバイスをお願いできますか。
砂原 私は美容師という職業の究極は「寄り添い」だと思っているんです。お客さまが普段どのくらい時間をかけて手入れできるかによって、自宅での再現性が高いヘアスタイルを提案してくれることも重要ですね。そのうえで、ひとつのヘアスタイルをドレッシーにもカジュアルにも、雰囲気を変えてみせられる人が、その人にとってのいい美容師なのではないでしょうか。
美容師って、美のメンター(助言者)的な存在だと思うんです。お客さまの一歩先の未来を見通しつつ、その人の今の気持ちに寄り添える美容師がお客さまを幸せにするんです。だから美容室に行ったときに「今こんな人生を送っていて、こんな自分になりたい」「自分の顔のここがコンプレックス」などと担当してくれる美容師に説明したらいいんですよ。
お客さまの夢や希望、顔のパーツなどさまざまな情報をもとに5パターンくらいのスタイルを提示してくれて、一緒に髪型を考えてくれる美容師ならOK! 反対に、そういう相談を面倒がる美容師は自分に寄り添ってくれている人ではないとみるべきでしょう。私の場合、例えばこのお客さまは恋愛モードだなと思ったらボブスタイルでも顔周りを軽くして、うつむいたときに垂れる髪でちょっと色気が出せるようにしてあげるの。男の人って斜め上から女性を見るでしょう。男性がふと視線を送ったときに女性が素敵に見えるような髪型を提案します。その後、次の来店時にお客さまがキラキラしていると「ああ、いい時期を過ごしてもらえたんだな」「恋が叶ったんだな」って、私も嬉しくなるんです。髪を通して、この人の人生を変えるお手伝いができたんだなって(笑)。
自分の個性が活かせるヘアスタイルが、その人の人生を輝かせる
田中 砂原さんは「美容師はデザイナー」ということもおっしゃってますよね。美容師さんに自分という素材を共有してもらい、一緒に「なりたい自分」を作ってもらう、みたいな……。
砂原 日本人は自分の顔の個性的な部分を隠したいと思うようで、今の自分に一番似合う髪型を追求するより、自分のアラを隠せる髪型に目が向きがちです。でも、それって「個性を出す」のとは逆ですよね。私としては、もっといろいろな角度から見て、その人の個性を活かしきってあげたいんです。
だから、その人の人生観から始まり「これからどうなりたいのか」「顔のどこを隠したいのか」など、どんどん質問してお客さまと一緒にヘアスタイルを考えていきます。美容というのは個性を尊重していいはずのもの。もっと自分を解放していいし、自由でいい。その人らしい人生を楽しめて夢に近づける髪型こそが、今その人がすべきヘアスタイルです。
田中 本の中に「ヘアケアは自分を労わる時間」という言葉が出てきますが、私自身この本を担当してからヘアケアに対する考え方が変わりました。毎日のヘアケア時間がリラックスタイムになり、その結果、翌朝のヘアスタイルがイイ感じに仕上がるようになって気分が上がり「髪が変われば人生も変わる」を実感できた気がします。
ーこの本を手に取ってくださる方がヘアケアを実践して、人生を変えてもらえたらすごくうれしいです。砂原さん、今日はありがとうございました。
(文:小澤彩)
▼対談で登場した書籍
『傷み、うねり、パサつき髪でも変われる! 基本のケアだけでキレイな髪になれました』
【髪質、加齢による悩みがあっても大丈夫!】基本的なケアだけで髪がキレイになる方法を漫画で楽しく学べるヘアケアの本です。「シャンプーのときの指の動かし方は?」「ボリュームが出るドライヤーの乾かし方は?」など、漫画だからこそ細かくわかりやすい解説となっています。誰でもできる基本のケアを軸に「傷み、乾燥」「うねり」など髪の悩みごとの対処方法も紹介。高いヘアケア商品や頻繁なヘアサロン通いがなくてもキレイな髪が作れるので、ズボラな人でも続けやすい! これさえ読めば髪に自信が持て、理想の自分に近づけます。