きっかけはあのメジャーリーガー。映画『リクはよわくない』が公開するまでの裏話
2020年4月に発売した絵本『リクはよわくない』。
こちらを原作としたアニメーション映画が、10/1に公開となりました。
原作はインプレス初の絵本にして、作:坂上忍さん、絵:くっきー!さんという奇跡的な座組み。
発売は1回目の緊急事態宣言とモロかぶりだったものの、発売日にはAmazon総合4位まで浮上し即重版しました。
さらにはトントン拍子で映画化も決まり、主題歌は斉藤和義さん、声優は松本梨香さんや花江夏樹さんなど超豪華布陣。
芸能界とはほぼ無縁のIT系出版社としましては、未だに夢見心地と言いますか、マジで夢なんじゃないかと思うくらいのラインナップでございます……。
今日は、なぜこの『リクはよわくない』がインプレスから発売されることになったのか、そのいきさつを簡単にご紹介できればと思います。
きっかけは、あのメジャーリーガーでした。
何を唐突に、と思われるかもしれませんが紛れもなくそうなのです。弊社はIT系の出版社ですが、野球本を出しまくっている編集者(何を隠そう私です)がいまして、2018年の夏には、甲子園100回大会に合わせて『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』(大利実著)という書籍を刊行しました。
本書は、高校野球のレベルの高い、神奈川の監督たちに100回大会への思いや指導論を語っていただく内容となっているのですが、スペシャルインタビューとして、神奈川の高校出身のプロ野球選手にも数名インタビューを行いました。
この企画を社内会議でプレゼンした際に、当時の社長(ベイスターズファン)から、
「筒香にもインタビューしてよ~!」
という(公私混同の?)オーダーをいただきました。筒香とは、当時横浜DeNAベイスターズの主砲で、現在はメジャーリーグ、ピッツバーグ・パイレーツで活躍されている筒香嘉智選手のことです。
横浜高校OBの筒香選手にインタビューできれば読者に喜んでいただけるのは間違いなく、社長の提案はごもっともなのですが、当時の筒香選手は、旧態依然としたアマチュア野球界に警鐘を鳴らすようなメッセージを各方面で発信しておられまして、ゴリゴリの高校野球本である本書のインタビューは受けていただけないのではないかと思い(要するにビビって)、ラインナップから外しておりました。
ですが、社長の提案を受けて著者さんとも再考し、「聞くだけ聞いてみよう!」ということでベイスターズ球団へ取材申請したところ、無事に受けていただける運びとなりました。
我々取材陣は、取材場所に指定されたキャンプ地、沖縄・宜野湾へ向かったのでした(※このnoteは野球ではなく『リクはよわくない』の話です)。
「今度ごはんに行きましょう」から絵本の企画が生まれる
宜野湾で筒香選手の取材を終え、著者さんと帰り支度をしていたところ、著者さんの知り合いのフリー編集者・Iさんにバッタリお会いしました。Iさんも同じく、筒香選手の取材で宜野湾に来ているとのことでした。
私は初めてお会いしたIさんと名刺交換し「東京に戻ったらご飯でも行きましょう」と話してその場を後にしました。
東京に戻って数日後、
「ご飯いつにしましょうか?」
とIさんからメールが。「実現しない大人の口約束ランキング」堂々1位(私調べ)の「今度ごはん行きましょう」ですが、律儀なIさんからのご連絡で本当に実現することとなりました。新宿で飲みながら(コロナ前)、色々な話をしました。
Iさんはもともと芸能事務所のマネージャーだったこと。
そのあと出版界に転身して野球雑誌の編集長を務めたこと。
今は野球以外にも幅広いジャンルを手がけていること。
そんな中、Iさんが運命の一言を発しました。
「坂上忍さんの絵本とかどうですか? 愛犬リクくんのお話を絵本にされたいようでして……」
そうなんです、Iさんは、坂上忍さんの著書を多く手がける編集者でもあったのです。
私も仕事柄、イラスト作品に触れる機会が多くあり(野球本ばかり出していますがメイン業務は年賀状ムックの編集です)、「いつか絵本を出したいな」という思いを常に持っておりました。
ですが、新規参入の難しい市場ゆえに、なかなか企画にまで落とし込めずにおりました。
そんなところに神の一声。あの坂上忍さんが絵本を出すという意外性、それも愛犬のお話を絵本にできるなんて。
「ぜひやらせてください!!!」
と飛沫を飛ばしながら(コロナ前でも迷惑行為)即答しました。
テレビ紹介から映画化へ
そこからはもう奇跡の連続でした。
『坂上どうぶつ王国』で共演されているくっきー!さんに絵を描いていただけることになったこと。
発売同日に同番組の3時間スペシャルがあり、その中で絵本にまつわる素晴らしいVTRを1時間近く放送いただけたこと(そのおかげもありAmazon総合4位!)。
この放送を見て感動された映画プロデューサーがすぐに映画化のオファーをくださったこと。
映画の主題歌を斉藤和義さんが、声の出演を豪華声優陣が続々と引き受けてくださったこと(ちなみに森川智之さん、松本梨香さんもベイスターズファン)。
などなど挙げればキリがありません。
IT版元で、自分が作った本が映画化される世界線はさすがに想像していませんでした。
本の奥付ではなく、映画のエンドロールに自分の名前が載る日が来るなんて夢にも思いませんでした(息子と観に行ってドヤ顔する予定です)。
人生、捨てたもんじゃありませんね。捨ててないですけど。
今でもふと冷静になると、とんでもないことが起きているなぁとニヤニヤしてしまいます。
あのとき、社長からのオーダーどおり、筒香選手の取材に行けて本当によかった。筒香選手があと2年早くメジャーに挑戦していたら実現しなかったわけですし、そもそも、コロナ禍のプロ野球選手の取材はほぼ100%リモートのため、あと2年ズレていれば沖縄でIさんに会うこともなかったわけで(こういう出会いが劇的に減っていますよね。本当に早く収まってほしい)。
キャストの皆様、スタッフの皆様にはもちろんですが、筒香選手、社長、そして何よりIさんに感謝の気持ちでいっぱいです。
以上、IT版元で野球本ばかり出していたらあのメジャーリーガーをきっかけに坂上忍さん&くっきー!さんの絵本を出すことができてついには映画にまでなった(←イマココ)、というお話でございました!
映画『リクはよわくない』、ぜひ劇場でご覧ください!
原作絵本もどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
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