著者×編集者対談|関数を擬人化してExcelをもっと身近に
Excelを書籍で勉強しようとしても、
数ページ読んだだけであきらめたくなってしまう……。
そんなExcel初心者でも楽しんで最後まで読めるExcelの書籍『関数ちゃんと学ぶエクセル仕事術 実務で役立つExcel関数を擬人化したら?』がインプレスから発売されました。
「Excel関数を擬人化する」という面白いアイデアはどう生まれたのか。ここでは、著者の筒井.xlsさんと、外部編集の今井孝さん、担当編集の小渕隆和の3人の対談をお届けします。
今までにない、新発想のExcel本
小渕隆和(以下、小渕) 『関数ちゃんと学ぶエクセル仕事術 実務で役立つExcel関数を擬人化したら?』がようやく書店に並びましたね。筒井さん、まずは今、どんなお気持ちですか?
筒井.xlsさん(以下、筒井) そうですね、高校生の頃から絵を描くのが趣味だった私にとっては、最終的に自分のイラストが書籍になって書店に並ぶのは夢みたいなところがあったので、非常に嬉しく思っています。本を手に取ってくださった皆さんが好意的に読んでくださっているのを感じるので、とてもありがたいです。この間、自分の本が類書に混ざって書店の棚に並んでいるのを見て、「あ、なんか1冊だけ雰囲気の違う本が混ざってるわ」と、“やってやった感”がじわじわこみあげてきました。
小渕 当初、この企画を持ってきてくれたのが今井さんでしたね。
今井孝さん(以下、今井) そうです。RelaxToolsAddin※の擬人化のツイートで、初めて筒井さんのイラストを見て、よく考えられているなと思ったんです。「ネクタイの飾りは常にA1にカーソルを移動する能力を表す」とか、随所にExcelに対する愛情が散りばめられていて、これは面白いと。その後、筒井さんのブログを拝見したら、すでにいろいろなキャラクター(関数ちゃん)がいて、いいところを押さえているなと思ったので、小渕さんに企画を提案したんです。
※RelaxToolsAddin:Excelを便利にする250以上の機能を体系化したアドイン
小渕 今井さんから聞いて、これはいいなと筒井さんに書籍化を打診させていただきました。社内でも「変わった企画を持って来たね」と話題になりました。私としても、今までにないタイプのExcelの本を作ってやったぞ、みたいな気持ちでいます(笑)。
Excel関数を擬人化した「関数ちゃん」の誕生のきっかけ
小渕 そもそも、関数ちゃんのブログはどんなきっかけで始められたんですか。
筒井 私は経理職で、Excelを本格的に使い始めたのは10年前くらいからです。会社では会計ソフトからデータを出してExcelで加工することが多く、前任者がExcelでマクロを組んでいたので、その保守で関数やVBAを覚える必要があったんです。
「関数ちゃんブログ」を始めたのは2020年12月ですが、当初は会計のブログにしようと思っていたんです。そのうちExcel関数についての記事を書くようになり、「VLOOKUP関数」を擬人化したイラストを描いて載せたのが関数ちゃんの第1号でした。
筒井 もともと漠然と、Excel関数ってゲームの召喚獣みたいだなと思っていたんです。当時、Excel関数を擬人化している人はいたものの、数を揃えている人はまだいませんでした。なのでキャラクターの数をたくさん揃えて、Excelの擬人化では先駆者になろうと、どんどん描いていきました。
筒井 Twitterでも、フォロワーさんたちから色々なアイデアやアドバイスをもらったりして、関数ちゃんにも反映させています。TwitterにはExcelの知識が豊富な方が多くいらっしゃるので、関数ちゃんのデザインのために情報収集しながら、実務では使わないようなExcelの豆知識も増えました。ブログやTwitterでの発信を楽しんでいたら、書籍化のお話をいただいたんです。書籍にするのは大変なんじゃないかと思っていたのですが、今井さんと小渕さん、お2人のサポート体制がしっかりしていたから、めちゃくちゃ大変だったという感じはなかったですよ。
今井 筒井さんの「関数ちゃんブログ」の世界観を壊しちゃいけないと思いました。だから「絶対こうしてほしい」と押し付けないように気を付けましたね。実際のところ、筒井さんは大変だったと思いますよ、あのスケジュール感。書籍が初登場となるキャラクターもいますし、2等身のミニキャラもほとんど書き下ろしですからね。でもミニキャラのおかげで華がある紙面になりました。
登場人物の掛け合いを楽しんでほしい
小渕 今回の本は、初心者をメインターゲットに据えつつも、Excelに詳しい人も楽しめる本になったと思います。例えば、「IF関数はネスト(入れ子)するのが分身の術っぽいから忍者風」「VLOOKUP関数は値を探すから探偵風」など……。それぞれの関数の擬人化に筒井さんならではのこだわりがあるので、ぜひじっくり観察してほしいですね。
筒井 既存のExcelの教本と違い、「こんな関数があるんだな」と思いながら、とにかく最後まで読んでもらいやすい本にしたいなと思いました。初心者の方は、中身は理解できなくても、とりあえずイラストを見ながらセリフの掛け合いを読み進めていただくと、「なるほど、ここはこう解決するんだ」と後になってわかってくるのではないかと思います。
今井 でも、ただ単に「イラストが載っていて簡単そう」みたいな本にはしたくなかったので、初心者にはちょっと難しいかもしれないけど、仕事で使ううえで知っておいてほしい内容もしっかり入れました。
小渕 メインの会話で、「Excel関数を使うとこういうことができるのか」と理解できる一方で、クスッと笑ってもらえるような感じの会話にしようと、3人の中では早い段階で思いが一致していました。難しく考えずに、とりあえず最後まで読んでもらえたらいいですね。
楽しく読んでもらうためにページタイトルもひと工夫
筒井 本を制作しはじめたときに、小渕さんに「書籍というものはやっぱり、1ページ目から最後のページまでの流れが大事。ストーリー性がないと」と言われ、読者目線での解像度が非常に高いなと感じました。
今井 最初に出した目次案が硬すぎると小渕さんに指摘されて。「全体的にタイトルを調整して、とことん振り切っちゃったほうがいいんじゃないの?」っていう。あれが転機でしたね(笑)。
小渕 そこから章や「エピソード」(本書の「節」にあたる項目)のタイトルが見違えて、雰囲気もガラリと変わりました。「これは一体何の本なんだ!?」みたいなタイトルになっているんですが、結果的には良かったんじゃないかと信じていますし、私も校正していて面白かったです。
今井 ちなみに、筒井さんと小渕さんが好きなタイトルはどれでしょう?
筒井 私が好きなのは、エピソード9の「派手にハッキリと順位付けする」ですね。タイトルのアイデア出しはめちゃくちゃ面白かったです。好きなアニメやマンガのネタを参考にして、遊び心を詰め込みました。
小渕 私は1つ選ぶとすれば、最初のエピソードの「先輩、エクセルから女の子が!」です。筒井さんからアイデアをいただいたとき、ストーリーの始まりとして完璧にはまったなと思いました(笑)。そんなネタが本のそこかしこに散りばめられているので、ぜひ読者の方にも宝探しのように楽しんでほしいですね。
本を読み終えて、関数ちゃんと友達になってほしい
小渕 それでは最後に、筒井さんから読者の方にメッセージをお願いします。
筒井 この本を読んで、「Excelのセルに関数を入れてみたいな」という人が1人でも増えてくれるといいなと思っています。とにかく関数を入力してみて、いっぱい間違えてエラーを出して、試行錯誤していくことが必要だと思うんです。かつての私もそうでした。だからこそ、この本では「失敗」とか「ダメ」という言葉を極力減らしました。初心者が「これは失敗」って言われてつらくなる気持ちがわかるので……。
Excelの関数は単なるアルファベットの羅列なわけで、「これを入れたらこの結果を返す」という機能です。形ではないので擬人化は難しいんですが、それでも関数と1つでも友達のようになってほしいと思って描いたのが関数ちゃんです。初心者の方にとっては、Excelはわからないことだらけかもしれませんが、好きな友達が1人いれば、親しみがわいて触りやすくなるはずです。自分の好きな関数ちゃんを、1人でも友達にしてもらえたら、と思います。
ーExcel関数を学ぶだけでなく、関数と仲良くなるための本。筒井さん、素敵なメッセージありがとうございました!
(文:小澤彩)
▼対談で登場した書籍
『関数ちゃんと学ぶエクセル仕事術 実務で役立つExcel関数を擬人化したら?』
Excel関数の擬人化キャラクター「関数ちゃん」と、経理業務の新人「キュウ」、先輩「シノ」が活躍するストーリーを中心に、仕事で直面するエクセルと関数の使いどころを、楽しく、テンポよく学べるExcel入門書。
【まえがきから第1章まで、以下のページから試し読みも可能】