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「看板」タイトルの重圧は達成感の裏返し? 歴史ある『できるWindows』をつなぐ舞台裏

スマートフォン全盛の時代とはいえ、仕事にプライベートにと私たちの生活に浸透しているパソコン。
そんなパソコンになくてはならない基本ソフトウェア(OS)が「Windows」です。
できるシリーズでは長きに渡って、このWindowsの解説書を世に送り出してきました。
ここでは最新の『できるWindows 11 2023年 改訂2版』の担当編集として、小野がその舞台裏をお伝えします。

Windowsの歴史=できるシリーズの歴史?

『できるWindows』の歴史は1995年刊行の『できるWindows 3.1』から始まります。
当時のWindows 3.1はMS-DOSと呼ばれるOSの上で動くアプリケーションだったのです。
MS-DOSは文字ベースでパソコンを操作するのが特徴で、当時はCUI(Character User Interface)と呼ばれていました。
よく映画などで、ハッカーなんかがハッキングするときに黒い画面に文字が表示されているようなやつですね。

一方で現在私たちが使っているデスクトップやアイコンなどを通じて、パソコンを操作するOSはGUI(Graphical User Interface)と呼ばれていました。
Window 3.1はMicrosoftが開発したGUIのOSということになります。
当時、MS-DOSがとっつきにくいと感じていた自分にとって、Windows 3.1で一気に使いやすくなった! と感動した覚えがあります。
そして次に登場したWindows 95とインターネットという革新的なテクノロジーが、私をどっぷりとパソコンおたくにいざなうことになるのです……。

だいぶ脱線してしまいました。

そんなWindowsの原点(※)を解説した『できるWindows 3.1』を皮切りに、OSのアップデートとともに『できるWindows』も刊行を続けてきました。
まさに二人三脚。
Windowsの歴史はできるシリーズの歴史といってもいいかもしれません。

※厳密にはWindows 3.0そしてWindows 2.0、Windows 1.0もありますが、全世界で爆発的に売れ始めたのは Windows 3.1からでした。

記念すべき『できるWindows 3.1』の書影。

長きにわたるタイトルならではの「重圧」と「マンネリ」をはねのけろ!

歴史があるということは、それだけの重圧があるといっても過言ではありません。
なにせ、インプレスホームページのトップを飾る(しかもセンター)くらいです。
要は看板タイトルということですね。
担当編集として、プレッシャーを感じざるを得ません。

実は『できるWindows』を担当するのは今回が初めてではなく、『できるWindows 10 改訂2版』に始まり、途中で諸事情により担当を離れるのですが、計3冊を担当してきました。
大型アップデートのある10月~12月に発売することが多いのですが、担当する度、身が引き締まる思いでした。
その反面、看板ともいえるタイトルを担当することはある意味、光栄なことであり、かつ仕事をやり終えた達成感は何物にも代えがたいものでした。
この達成感があるからこそ、担当を続けられたところはあります。

インプレストップページのセンターを飾っているのが『できるWindows』なのです。

一方で長年続くタイトルにありがちなのが「マンネリ」です。
一度、型が決まってしまうと、その型から逃れられなくなってしまうものです。
しかし、『できるWindows』では、常に内容のブラッシュアップを心がけてきました。
デジタルカメラが普及すれば、撮影した写真をパソコンで楽しむ方法を。
テレワークのニーズが高まれば、ビデオ会議でコミュニケーションする方法を。
読者のニーズはもちろん、日々進化するテクノロジーや社会情勢なども踏まえ、より良いものを届けたい、という思いの表れといってもいいでしょう。

ちなみに今回の大きな改訂のポイントは「スマートフォン対応」でした。
何を今さら…、と思われるかもしれません。
いえ、前書となる『できるWindows 11』でも入っていたのですが、自分が担当するにあたって、もっと強化したほうがよいのではないか、と感じていたのです。
これは個人的にパソコンとスマートフォンを別々に使う、という時代ではなく、両者を連携することでもっと便利になるという経験によるものです。
そこで今回の『できるWindows 11 2023年 改訂2版』では1章丸々をスマートフォンとの連携にスポットを当てて解説しています。

過去2年にさかのぼった目次の変遷。
最新版では基本編と活用編の二段構成となりますが、スマートフォンの章を追加するだけでなく、全体の構成や章タイトルも細かくチューニングしているのです。

新機能モリモリか、実用性か。そこが問題だ

近年、Windowsのアップデートで大きく取り上げられるのが、新たに加えられる新機能の数々でしょう。

すでに述べた内容のブラッシュアップとも関わってきますが、新機能をとにかく盛り込んでいくというのも1つのアプローチといえます。
しかし、それではいくらページがあっても足りません。
そんな時に求められるのが、編集のチカラです。
単純に新機能を盛り込むだけでなく、読者にとって実用的な新機能を厳選して盛り込む。
これが重要なポイントだと考えています。

しかし実用性一辺倒では、新鮮味に欠けてしまうこともあります。
世間一般で話題となっている機能も読者としては気になっているはずです。
例えば、Androidアプリを利用できる機能が今回は当てはまります。
実用性はもちろん、新機能に触れる楽しさにも配慮する……。
このバランス加減も念頭に入れながら、目次を制作していくようにしています。

特別付録と侮るなかれ! 小冊子の裏話

『できるWindows』は2018年12月発売の『できるWindows 10 改訂4版』から、綴じ込みの特別版小冊子が付いています。
本体の内容もさることながら、小冊子のテーマについても頭を悩ませつつ、妥協せずに作っています。
今回はショートカットキーをテーマにした小冊子になっています。
実は一度、ショートカットキーをテーマにした小冊子を付けてはいますが、今回の大きな目玉はWindows 11で新たに加わったショートカットキーを収録している点です。
書籍では取り上げられなかったショートカットキーも掲載されているので、実は非常にお得なのが本書なのです。

その小冊子ですが、実は制作する上で大変な一面があります。
それは、本体より前に仕上げなければならないという点です。
綴じ込みという性格上、なんと本体よりも早めに入稿(印刷所にデータを納品すること)しなければならないのです!
書籍を進行しつつ、小冊子も進行する……、と実は2冊分の書籍を作っているという苦労があるものの、それでも読者に喜んでもらえるなら! という思いで取り組んでいるのは言うまでもありません。

小冊子の変遷。
こうしてみると多彩なラインアップと言えます。

どこまで盛り込む? 時間との闘い

どんな仕事にもリミットがあります。
書籍の場合は入稿日がこれにあたります。

入稿日を遅れてしまうと、書籍の発売も遅れてしまいます。
これは絶対に避けねばなりません。
そしてもう1つ、遅れてはならない事情が……。
それは「いいWindows 11の日」です。

前書の「できるWindows 11」では、11月11日を「いいWindows 11の日」として、発売キャンペーンを展開しました。
本書も同様に書籍発売前に全文を無料公開するというキャンペーンを実施することになっており、書籍をアピールする大きな機会を逃すわけにはいかなかったわけです。

その一方で、今回のWindows 11のアップデート「2022 Update」では、2回に分けてアップデートが提供されるという、予想外の様相を呈していました。
しかも、個人的に最も注目していた「エクスプローラーのタブ機能」は、2回目のアップデートで追加されるというではありませんか!
結果、なんとか「エクスプローラーのタブ機能」を盛り込んで世に送り出すことができましたが、追加のアップデートが公開されるまで、ドキドキしながら進めていたのは内緒です。

実はこれ以外にも、突然アプリがアップデートされて画面がガラッと変わり、入稿直前に画面を差し替えて対応した、なんていうこともありました。
このアップデートについては、毎回、リミットとの闘いでどこまで入れるのかが悩ましいところといえます。
どこかで区切りをつけなければならない、というギリギリの判断を経て、書籍を送り出しているのです。

エクスプローラーのタブ機能を解説した紙面。
間に合ってよかった……。

そんな苦労を経て出来上がった本書が、少しでも皆さんのお役に立ち、可能性を広げる一助になれば幸いです。

■書誌情報
書名:できるWindows 11 2023年 改訂2版
著者:法林岳之・一ヶ谷兼乃・清水理史&できるシリーズ編集部
発売日:2022年12月1日
ページ数:320ページ
サイズ:B5変形判
定価:1,100円(本体1,000円+税)

・インプレスブックス

・Amazon.co.jp


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