数式を見るだけで鳥肌!?「ドドド初心者」が作るExcelコンプレックスを解消する一冊『一生使えるお仕事上手のExcel入門』
「この本の企画ってどうやってできたの?」「本のタイトルってどう決めているの?」。担当編集者が普段見せない本づくりの制作の裏側、こだわりを語るマガジンです。今回ご紹介するのは、11月6日発売の新刊『数字が苦手でも使いこなせる! 一生使えるお仕事上手のExcel入門』。本書はとことん初心者目線を追求した一冊なのだとか。企画を考えた経緯や制作中のエピソードを担当編集・和田に聞きました。
―――まずは簡単にこちらの本の内容を教えてください!
Excelに苦手意識のあるExcelの初心者さんに向けて、仕組みなど原理原則から業務での実践的な使い方までを、見やすくやさしく解説した本です。
正直なところ、詳しい人にとっては「こんなこともわからないの?」というレベルの内容だと思います。
この本は、文字列や数字がたくさん入力された表を見たり、「関数」と聞いたりしただけで「自分には無理……だって苦手だし……」と思ってしまうレベルの人が、業務で必要な知識や使い方のノウハウをひと通り学べる実践的な入門書です。
異動や転職でイチからExcelを勉強したい人はもちろん、「今さら人には恥ずかしくて聞けない」と思っているような人にもオススメです。
―――パソコン書の中でも、Excelをテーマにした本はかなり多く出ていますが、どのような経緯で本書の企画を考えられたんでしょうか?
インプレスにいるにも関わらず、私自身がExcelが苦手で、「正直、そろそろ自分がExcelをマスターできる本が欲しい」と思ったのが企画のきっかけです。
本書のシリーズ「一生使える見やすい資料のデザイン入門」「一生使えるプレゼン上手の資料作成入門」のおかげで、PowerPointを使った資料作りはそれなりにできるようになり、見やすいグラフ作りなどはある程度身に付いたのですが、Excelは苦手でした。人が作ったファイルを少しさわる程度なら……というレベルで(でも関数がおかしくなったりして戸惑うこと多数)、イチから自分で集計表などを作ることができず、ずっとコンプレックスでした。そこで、「見やすくわかりやすい一生使えるシリーズの特長を生かした、初心者にやさしいExcel本を作ろう」と考えました。
―――自身もExcelが苦手だからこそ、初心者目線を追求した書籍を作りたいと思われたんですね。続いて、制作過程で大変だったことを教えてください!
次の2つです。
①具体的にどう初心者に役立つ本にするのかを考えること
②ゲラやサンプルファイルの確認
①については、「ハードルの低さ」と「実践的である」ということを最初に決めていました。
しかし、Excelの書籍は非常にたくさん出版されています。そんな中で、自分と同じような困りごとを抱えている初心者が必要とする本はどういった本なのか、そしてどんな本なら手に取ってもらえるのかを、掘り下げていくことにしました。
まず、業務で使うことをテーマにしたExcelの書籍は、内容がしっかり詰まっているものが多く、デスクに置いておいて困ったときに調べるには便利だと思うのですが、初心者にはハードルが高く挫折してしまうと感じていました。特に関数のページは自分のレベルの低さが原因ではあるのですが、「ダメだ、自分にはこれを解読することはできない……」という気持ちに……。
一方で、入門書は操作中心のものが多く、操作の手順ではなく、業務で必要なExcelの基礎知識と使い方のノウハウを身に付けたい人にとっては物足りなく感じます。
時短ワザの本は、日常的にExcelを使っている人にとってはとても便利ですが、初心者の自分には、まず必要な基礎的な知識、例えば関数式の構造など仕組みが理解できないので、残念ながら本を使いこなせません……。
そこで、この本では、仕組みなどからきちんと学びつつ、実践的なノウハウが身に付く本、また覚えることがたくさんあるとしんどいので、まず覚えるべきマスト事項に絞った本にしようと考えました。
あと実は、本書の制作に協力してくれた社外の編集者である井上さんと、身近な友人の例などを話し合いながら「自分を含め、この本を読んだ人が『私、Excel使えます!』と自信を持って言えるようにしたいなあ」と、話していました。また「『Excelが使える』とは、どれくらいのレベルから言ってもいいのかな」という疑問もあったので、著者の中本さんに質問を投げかけました。正直、職種や業種、シーンによって千差万別ではありますが、中本さんのアドバイスもあり、本書では読者のゴールは「Excelが使える=Excelに備わっている機能の知識が一通りあり、Excelを用いて事務的な業務ができる」に設定しました。
最初の段階で「この本を読むことで読者がどうなれるのか」というゴールを具体的に決めたことで、その後の台割・紙面作りであまりブレなかったなと感じます。
―――では、②は「ゲラやサンプルファイルの確認」とのことですが、具体的にどんなところに苦労したんでしょうか?
自分自身に知識がないので、ゲラのチェックにとにかく時間がかかりました。もちろん、知識がないからこそ、初心者目線でゲラを読み、わかりにくい点や矛盾を感じた点を指摘できたので、そこはよかったと感じています。
一方で、「ここがわかりにくいけど、具体的にどう変更するとわかりやすくなるんだろう」という修正の方向性の提案をしたり、「ここが間違っていそうだけど、では何が正しいのか?」など正しい情報を調べたりするのは、普段の書籍の校正よりも時間がかかりました。また、わかりやすさにこだわって丁寧に説明するとなると、その分、他の内容を削らなくてはいけません。そのさじ加減も迷いました。
本書の著者である中本さんは、Udemyの動画講座で実績があり、また編集を担当してくれた社外編集者の井上さんは多数のExcel本の編集経験があるため、内容面では信頼していました。ただ、書籍として「より初心者に親切かつ間違いのない解説にするにはどうしたらいいのか?」という点には頭を悩ませました。
そこで、ちょうど入社したての編集部の新人スタッフが「Excelのことはほとんどわかりません!」とのことだったので、ゲラチェックを手伝ってもらったんです。そのスタッフの意見も採用したことで、より初心者目線がいかされた本になっていると思います。
―――「とにかく初心者にやさしい本にしたい」という想いがひしひしと伝わってきました! カバーや紙面もやさしい印象になっていますが、具体的にどんなことを留意されましたか?
カバーは、「この本だったら自分でも読めそう」とハードルをとにかく下げることを心がけました。
初心者さんには、ノウハウの収録点数などをアピールしても刺さらないだろうと思い、「初心者でも、未集計の売上データから見やすい集計表が10秒でできる!」と、この本を読めば何ができるのか、どうなれるのかがイメージしやすい打ち出しにしています。井上さんに、「初心者でもこの本を読んで10秒でできることって何?」と質問し、最終的にこの帯の内容になりました(笑)。
あと、「ドドド初心者」というキーワードは、井上さんと私がこだわっている部分で、ここだけは初期からずっと変えていない気がします。初心者ではなく、「ドドド」を付けることで、自分のように本当に初心者で自信のない人向け、というアピールのつもりです。
もともとデザイナーさんの提案で、オレンジのカラーは2種あり、色校正をみてから決めています。どちらも捨てがたく迷ったのですが、編集部のスタッフの意見も聞いて、より鮮やかなオレンジにしました。実は帯の表面加工も2種類あったんですが、たまたまオフィスにいた営業部のスタッフから「マットな質感のほうが、落ち着いた雰囲気の書店さんで置きやすく感じます」と意見をもらい、マットな質感の帯加工にしています。迷っていたので、客観的な意見を聞けて助かりました。
紙面は、「とにかく見やすくして読み手の負担を減らし、理解しやすい構成とレイアウト」にこだわっています。文章だけだと理解しにくい人でも、読みやすくなるように意識しました。
特に、初心者にとって最難関の関数は、なるべく視線をあっちこっち移動させず、上から下へとできるだけすっと読めるようなレイアウトにこだわっています。デザイナーさんも、打ち合わせのときから「分かりやすく見やすくしたい」とアイデアを出してくださった部分です。数式例も大きめに表示することで、他にはない見やすく読みやすい紙面になっていると思います。
―――読みやすさやわかりやすさも、初心者が手に取るにあたって重要なポイントですよね。最後に、この本が気になっているという方にこの本のイチオシのポイントを1つ教えてください!
Excelドドド初心者の私が、自分と、自分の周りにいるExcel初心者でもExcelが使えるようになることを目指して作った本なので、「数式を見ただけで鳥肌が……」「今さら初歩的なことを人に聞くのが恥ずかしいけど、正直どうにかしたい!」というような悩みを抱えている人には、お役に立つはずです! 一緒にExcelコンプレックスを解消しましょう!
もともとExcelが使える人は、今後AIに自分の変わりに作業してもらう……なんてシーンも増えてくると思います。一方で、そもそもExcelが分からない人は、AIにどう指示していいのかがわからず、Excelが使える人とますます差がついてしまう……なんてこともあるかもしれません。本書を読んで最低限のExcelの仕組みや使い方ノウハウを身に付けておいて損はないはずです!