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【編集者の書棚から】#本好きの人と繋がりたい Vol.20

出版社は本好きの集まり。この「編集者の書棚から #本好きの人と繋がりたい 」では、毎回2~3人の社員が、いち読者として最近手に取った書籍を紹介していきます。「書棚を見ればその人がわかる」とよく言われるとおり、インプレス社員の人となりが垣間見えるかも(?)なマガジンです。今回ご紹介するのは、『世界の名作絵本 アドベントカレンダーブック』mona、大宮とき子(永岡書店)と『編曲の美学 アレンジャー山川恵津子とアイドルソングの時代』山川恵津子著(DU BOOKS)の2冊です。


クリスマス気分を盛り上げてくれる古くて新しい絵本

年末が近づいてくると、クリスマスを意識する家庭も多いと思います。子どものいる我が家もまさにその通りで、子どもたちは「プレゼントもらえるかな?」「サンタさん何をくれるんだろう?」とわくわくどきどきしながら毎日を過ごしています。

そんな浮き立つ心をさらに盛り上げてくれるクリスマスシーズンならではのアイテム「アドベントカレンダー」をご存知でしょうか?
アドベントカレンダーとは、12月1日からクリスマスイブまでの24日間
毎日ひとつずつ窓や扉、箱などを開けてカウントダウンしていくカレンダーです。小さな窓を開けるたびに、お菓子やプレゼントが出てくるので、クリスマスまでのわくわく感がさらに高まります。

そんなアドベントカレンダーの絵本版が今回紹介する本です。可愛らしいドールハウスのような形をしたケースには24個の窓があり、中には20冊のミニ絵本と4つのペーパーアイテムが入っています。最近はこの絵本を1日1冊、就寝前に子どもに読み聞かせるのが習慣となりました。

さて、この絵本の内容について「アラジンとまほうのランプ」「人魚姫」「みにくいアヒルの子」など大人から子どもまで知っている有名な童話がセレクトされています。しかし、私が幼い頃に読んだ内容と少しずつ異なる箇所があり、新鮮な気持ちで読んでいます。例えば、「みにくいアヒルの子」では、灰色の羽毛で兄弟たちと見た目が異なる主人公に対し、アヒルのお母さんは冷たくあしらうことなく、最後まで温かく見守っています。

後から気づいたのですが、この絵本は「心豊かに自己肯定感を高める」ことをテーマに、ストーリーの大筋は守りながらアレンジされているようです。本の最後には簡単な解説があり、読み聞かせる大人も「なるほど」と納得しながら、一緒に楽しむことができます。

現代社会において変化を求められるのは、どの分野においても避けられないことだと思います。大昔からある童話も例外ではなく、時代に合わせて変わっていくのだなと、改めて関心させられました。この絵本を通して、私も毎日新たな発見を楽しみながら読み聞かせをしています。(編集部・竜口明子)


裏方仕事の面白さをいきいきと描く本

1980年代のアイドルポップスにハマったのはいつからだったか。40代の私にとって、もちろん子供の頃にテレビの歌番組で観ていた記憶はありますが、音楽としての奥行きの深さに触れて本格的に好きになったのは大人になってからです。

中古レコード店や古書店で駄菓子のような値段で売られている80年代のレコード盤を買っていくうちに、自分の好みの作曲家や編曲家を覚えるようになってきました。そのうちのお一人が、山川恵津子さんです。山川さんのお名前は、おニャン子クラブというアイドルの作品を通して意識し始めました。

「避暑地の森の天使たち」「アンブレラ・エンジェル」「シーッ!愛はお静かに…」……シングル以外のアルバム曲に妙に洒落たリズムや上品なコード進行の曲があったりして、クレジットを確認するとたいてい山川さんの編曲なのでした。歌メロに対して伴奏の楽器もメロディアスに動く見事な構築美。シンセの音色も効果的に使って、キラキラ、ヒラヒラした世界を作り上げる手腕に魅せられます。

本書はそんな山川さんが自身のお仕事を振り返った初の書籍です。ピアノが弾けて歌も歌えるのに人前で歌うのは絶対に嫌で、最初から編曲家という「裏方」に憧れて目指すという変わった経歴の持ち主。80年代には女性としては珍しい作編曲家になることに成功し、アイドルポップスの黄金期を支える存在になりました。

とはいえ本書には、アイドルや芸能人との社交話はほぼありません。ひたすら音楽の生産現場の具体的な話が続き、裏方たちのプロフェッショナルな働きぶりが称えられます。

編曲家のメモ書きのような譜面を演奏用に清書する「写譜屋」や、シンセ担当の「マニピュレーター」、歌手に聴かせるデモ録音用の「仮歌歌手」など、あまり語られることのない職人仕事にも光が当てられていきます。

それを描く山川さんが本当に音楽づくりの現場を愛してやまず、誇りにも思っていることが伝わってきて胸が熱くなりました。裏方には裏方の美学がある。編集者というやはり裏方の職業を選んだ自分にとって、勇気づけられる思いがする読書でもありました。(編集部・瀧坂 亮)


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